試写会

俺とはやての毎日は、忙しかった。


あっという間に試写会の日がやってきた。


手紙が、届いたかどうかも確認する方法はなかった。


もし、届いていたら関係者席だから、後ろの席に座ってるはずだ。


試写会が、始まった。


「こちらで、お願いします。」


「はい」


案内された席に、座った。


映画が、始まった。


無事に終わる。


「では、こちらから順番に進んでください。」


立った時に、見えた席に二人が見えた。


「かっちゃん、後で呼んで」


壇上に上がる前に、かっちゃんにだけ話しておいた。


キャー


大歓声の中、壇上に立つ。


「やー。凛」


みんなが、喜んでいる。


試写会は、無事に終わった。


何か、歓声が全部終わっちゃった後は寂しいな。


「かっちゃん、どうだった?」


迎えに来たかっちゃんに、話しかけた。


「車でお待ちしてもらっていますから、帰りましょうか」


「はいはい」


「じゃあね、凛。」


「また、明後日だったね。」


「うん、じゃあね」


「はいはい。」


ナリミちゃんに、手を振った。


この世界で、ナリミちゃんは嫌いじゃなかった。


彼女も、俺と同じタイプで歌手のARISAと付き合っていた。


唯一、プライベートでも、ご飯を食べる中だ。


「どうぞ」


かっちゃんが、開けて車に乗った。


「大宮さんだよね?」


目が点になっていた。


「吉宮凛さんですか?」


「初めまして」


「本物からだと思わなかったです。」


「よかったね、梨寿りじゅ


「うん」


「あっ、名前。梨寿りじゅって読むんだね。リスかと思っていた。ごめんなさい」


「リスでいいですよ。何か、可愛いです。」


大宮さんは、笑った。


「じゃあ、リスさんで、えっと」


「彼女の真白です。」


真白ましろさんですか、よろしくお願いします。」


「あの、何故お手紙をいただけたのでしょうか?」


「そうですね。単純に興味があったんです。悟をあんなに褒めていただけるなんて、初めてだったもので」


「そうなんですか?とても、素敵な役でしたよ。私は、人間味があって好きでした。」


「わかっていただけますか?俺も好きなんですよ。悟」


真白さんは、大宮さんを愛してるのが伝わってきた。


「あの、何故?舞台挨拶まで、呼んでいただけて、こうして会っていただけたのでしょうか?」



「興味をもった以外の話をするならば、大宮さんの手紙に救われたからです。」


俺は、財布から手紙を差し出した。


「これ、私が吉宮さんに初めて出した手紙です。」


「そうです。俺が、大宮さんから初めて受け取ったラブレターです。」


「ら、ら、ラブレターなんて、そんな大それたものじゃありませんよ。」


真白さんは、少し怒っていた。


「真白さん、大丈夫ですよ。俺は、女に興味ないですから…。財布から、写真を取り出した。俺の彼氏の鴨池はやてです。」


「か、鴨池さんって、【鼓動の速さでわかる事】の央美君ですよね。」


その言葉に、真白さんは俺を見つめた。


「そっちなのですか?」


「そっちですよ。芸能人なら、よくある事でしょ?」


俺は、ニコッと微笑んだ。


「特に興味をもったのは、こないだの手紙です。シェアハウスと彼女のヤキモチ」


「あっ、あれですか…」


「今も、住んでるんですか?」


「住んでます。」


「真白さんは、嫌なんですよね?」


「あれから、二週間経ってイチャイチャするのは部屋って決まった。私は、梨寿とイチャイチャしたいのに」


「それが、嫌なだけ?」


「後、由紀斗さん、梨寿の旦那さんの相手が両方いけるタイプだから、嫌。」


「それは、嫌だね。わかるよ。その気持ち」


「本当に?」


「はやてのマネージャーが、両方いけるから嫌だもん、俺も…。」


「それは、吉宮さんの方が嫌ですね。」


「でもね、信じなくちゃね。やってられないよ。この仕事は特にね」


俺は、真白さんの肩を叩いた。

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