由紀斗の思い

「市木、またご飯行こうな」


「早坂、ありがとうな」


「全然、幸せになれよ」


「早坂も、幸せになれよ」


俺は、二人に頭を下げた。


俺と由紀斗が、見えなくなるまで二人は手をふってくれていた。


「よかったな、千尋」


「はい」


俺は、由紀斗の手を握りしめた。


「指輪、買いに行きたいな」


ワガママを言ってみた。


「行こうか?さっき、駐車場の近くにあったんだよ。」


「そんな偶然あんの?」


「うん、あった」


そう言われて、ついていくと本当にあった。


指輪のサイズをお互いに測った。


「この形のリングを二つください。」


「かしこまりました。」


店員さんは、受けとる日にちを書いてくれる。


由紀斗は、カードで払っていた。


俺達は、店を出た。


「楽しみだねー」


「あの人、目丸くしてたな」


「確かにね」


「俺達が、二人で指輪買うの?ってなったかな?」


「そうかも」


俺と由紀斗さんは、車に乗り込んだ。


「千尋、許されてよかったな」


「由紀斗のお陰だよ。」


「俺は、何もしていないよ」


「そんな事ないよ。先輩の言いなりをやめれたのも由紀斗のお陰だったよ。」


「彼もただ、千尋を好きだっただけなのにな」


「あの選択肢を選ぶって力強く言われて俺、すごいなって思った。でもね、由紀斗。俺、今ならわかるよ。由紀斗が、もし早坂のようになったとしても、俺は由紀斗の初めてでいたい。」


車が、信号で停まった瞬間にハンドルを持つ由紀斗の手を握りしめた。


「俺も、千尋が初めてがいいよ」


そう言って、由紀斗は笑ってくれる。


「由紀斗、俺はね。一緒にいるだけで幸せだよ。」


由紀斗は、ホテルに車を停めた。


「無駄遣いじゃないの?」


「やっぱり、二人がいると出来ないから」


由紀斗は、俺の腕を引っ張って部屋に連れていく。


「由紀斗」


「千尋、しよう」


「なんで?」


「理由なんてわかるだろ?」


由紀斗は、俺の服を脱がしてきた。


「ダメだよ」


「ダメじゃないよ。早坂さんの話を聞いて、ヤキモチ妬いた」


「可愛いなー。由紀斗は」


「んんっ、はぁはぁ」


トロリと溶けた顔に、夢中で俺は由紀斗を抱いていた。



「二人が来てから、声我慢してたから」


寝転がったベッドで、俺にくっつきながら由紀斗が言った。


「由紀斗、可愛い」


「恥ずかしいよ」


由紀斗のヤキモチは、嬉しい。


スマホを取り出した。


「どうした?」


「いや」


snsの通知を見ないで消した。


カシャッ


「何だよ。急に…。」


「撮りたくなっただけ」


人が、その瞬間の一部を切り取ってあげるものに振り回されたくない。


梨寿りじゅは、もう忘れられてるかな?」


「子供の事?」


「ああ、それだけがずっと気がかりなんだ。」


「そう簡単には、いかないよ。それでも、前に進んでるのはわかるよ。由紀斗も、同じだろ?」


「そうだな」


出来ない気持ちは、死ぬまで消えない気がするんだ。


それでも、今、梨寿さんが前に進んでるのは、俺にもハッキリわかるんだ。


振り回されないで欲しい。


「由紀斗も、振り回されないで」 

「千尋」


俺は、後ろから由紀斗を抱き締めた。


「みんなで、一緒に進んで行こう。一歩ずつ。だろ?」


「そうだな」


由紀斗は、俺を抱き締めてくれた。


「じゃあ、シャワー浴びて帰ろうか?」


「うん」


俺は、あの日みたいにシャワーに入った。


「あの日、由紀斗が俺の話を聞いてくれなかったよね」


「千尋、んんっ」


「あの日の仕返し」


「ハァー、ハァー、千尋の意地悪」


由紀斗は、そう言いながらもまんざらじゃない風に俺にれてくれた。


「由紀斗、愛してるよ」


「俺も、千尋を愛してるよ」


また、キスをした。


俺と由紀斗は、ホテルを後にした。


車に乗り込んで、家に帰った。


これからは、ちゃんと四人で生きていきたいと思ったんだ。


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