6. 物々交換

 2日目の朝。明るくなって、自然と目が覚めた。


 現実時間と明記していない限り日時はすべてゲーム内時間を基準にしてあるのでよろしくです。



 ゲーム内では、お風呂やシャワー、トイレ、歯磨きなどは必要ない。

 お風呂はぶっちゃけほしいけれど今はない。


「クルミ、サクラちゃんおはよう」

「あー、おーはーよー」

「おはようございます」


 朝ご飯は、お金がないので、携帯食料を食べた。説明どおり「ぱさぱさして不味い」味だった。

 気になったので、ウサギの干肉を分けて試食してみた。

 なんだろう、ササミのハムみたいな感じで、塩味でそれほど悪くなかった。

 干肉に比べたら、携帯食料は食べられたものじゃない。

 お水は、宿の人がおなさけで、ただでくれた。


 昨日分かったことだが、このゲームは、空腹度が2つあって、お腹が空くだけでなく、のどが渇くのだ。

 水筒が欲しいような気がする。

 宿屋のマリッジおばさんに相談したところ、他の冒険者に、ウサギの干肉を売って、空き瓶をもらって来れば、井戸のお水を詰めてくれるという。

 露店用風呂敷というのをマリッジおばさんに頂いた。なんでもそれで、最初の小さな露店が開けるという。


 初めに出現した村の中央広場に、風呂敷を広げ、ウサギの干肉を並べる。

 干肉を1つ小さく千切って、試食用に分けた。


 ●ウサギの干肉(塩味/試食用)x30

  塩味と肉のうまみが凝縮してうまい。小さく千切った試食用だ。保存食になる。

  種別:食べ物

  レア度:1  ランク:2

  満腹度:1上昇


 残りの干肉は13個だからそのうち8個を売りに出す。


「ウサギの干肉いかがですか、空き瓶6つと交換しましょう」


 今の店番は私の担当だ。

 クルミとサクラちゃんは露店の後ろの方で、ゲーム内の公式攻略wikiと掲示板で情報収集をしている。

 公式wikiは、匿名記名どちらの設定でも書き込めるが、匿名でも管理者はユーザーを特定できるので、警告やアカウント停止措置が可能だと書かれていた。

 公式掲示板は、記名のみである。


 朝といっても、ゲーム内時間で15時間あまり経過、現実時間で2時間半なので午後2時30分だ。

 人通りはぼちぼちあるし、新規ユーザーもログインしてきていた。

 開始場所を4か所に分割し、かつ時間をずらしてユーザーを追加しているので、そこまで混んでいない。


 2人組の第一陣と思われる男性ユーザーが、声を掛けてきた。


「干肉? 携帯食もポーションも不味くてうんざりですわ」

「いらっしゃい、空き瓶と交換してくれませんか?」


 試食を2人に渡して、様子を見る。


「うまいな。これなら食えるわ。セシルでもいいけど、空き瓶もあるよ」

「ぜひ1個あたり瓶6個でお願いします」


 空き瓶は1つ10セシルで雑貨屋で売れるそうだ。


「それじゃ、安すぎるわ。携帯食は180セシルで売ってた。引き取りは108セシルだった」

「じゃあ180セシルくらいで」

「分かった。全部で4つくれ。1つは瓶6個と120セシル。残りは1つ180セシルでいい?」

「はい。ありがとうございます」

「そういえば、空き瓶も雑貨屋で20セシルで買えるぞ」

「あら、でもちょっと高いですね」

「そだね」


 トレードウィンドウを利用して交換する。

 セシルは通常銀貨とかになっていなくて、数値だけだ。もちろんアイテム化してコインを表示することもできるが、面倒だもの。

 便利なことに標準で「関数電卓」「自動レジ」機能がホログラムで利用できるようになっている。


 残りの干肉4個は、空き瓶がなかったのでセシルで売った。180x4で720セシルなり。


「空き瓶買い取ります。1つ15セシルです」


 まだ紙とペンを買っていないので、通りかかる人に声を掛ける。


 午前中で、20個300セシル分買い取りできた。残り1,000セシルなり。

 空き瓶をどうするのか聞いた人に、水を詰めて水筒にすると言うと、それもいいねと言っていた。

 でもポーションの瓶はコップぐらいの大きさなので「空き瓶(大)」があるんじゃないかとのこと。

 ポーションを入れるときは瓶の半分ほどは空いている。

 なるほどね。そうだよね。


 とりあえず、宿屋のおばさんの所に戻り、水をもらう。


 ●水の入った瓶

  普通の水が入った瓶。特に味はしない。

  種別:飲み物

  レア度:1  ランク:2

  満腹度(水分):10上昇


 これは料理になるのだろうか、それとも薬師の分野だろうか。

 きっとどっちでもないんだろう。

 3人分15個ほど確保して、宿屋でお昼を食べる。

 50セシルなので知っている中で一番安いと思う。

 残りは850セシルだ。

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