春斗くんの受難【男2女2 計4】

キャットファイトのちエセBL展開なので、偽物でもBLが苦手な方はご注意。

まれに誤解を受けるのですが、エセBLなので本物のBL展開はありません。


★台本ご利用の際は、必ず目次ページの規約

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をお守りくださいますようお願い申し上げます!


●コメディ

●所要時間 15分程度


●配役 男2女2計4


登場人物


春斗(はると)【男】

明るく優しい八方美人タイプのイケメンで、老若男女問わず人に好かれやすい。

ゆえにとても女性にモテるが、作中では残念男子。

大学生くらい。以下の登場人物は大体同い年くらい。


正樹(まさき)【男】

陰でモテるイケメンだが、クールで近寄りがたいタイプ。

春斗と付き合ってることにされてしまう。

他の3人よりちょっとあとからの出番。


明美(あけみ)【女】

お菓子作りだけ得意系女子。明るくやんちゃタイプ。

春斗のことが好き。

春斗をめぐって雪菜とキャットファイトを繰り広げるが?


雪菜(ゆきな)【女】

一見女子力高め清楚系女子。

春斗のことが好き。

春斗をめぐって明美とキャットファイトを繰り広げるが?



―― ここより本編 ――


明美:

と、いうわけでーえ。雪菜はさっさとあきらめてほしいな。

春斗くんはあたしと付き合ってるから。


雪菜:

は? なにが「というわけ」よ。

付き合ってないでしょ。ね? 春斗くん。


春斗:

あ、あの……。


明美:

付き合ってますー。


雪菜:

明美となんか付き合ってないでしょ! ねえ? 春斗くん!


春斗:

……付き合って、ないです……。


雪菜:

ほら!


明美:

付き合ってるから! なんならこれからお付き合いする予定だから!


雪菜:

予定を現在進行形で言わないでよね!


明美:

あたしが今から春斗くんに「お付き合いしてください」って言うから!

そしたら春斗くんは「よろこんで!」って言って、晴れてお付き合いが始まるから!


雪菜:

始まらないでしょ! ねえ? 春斗くん!?


春斗:

その予定は……ないです。


雪菜:

ほら! 嘘つくんじゃないわよ!

大体、春斗くんは私のことが好きだから!

でしょ!? 春斗くん?


春斗:

いや、あの、はい、好きだけど、恋愛とかの好きでは……。


明美:

ほーら、友情だってよ、友情。

むしろ雪菜なんか友達ですらない「お知り合い」のレベルだから!


雪菜:

私がお知り合いなら、明美なんか通りすがりじゃない!

「あ、なんか見たことあるなー」って程度のモブのひとりでしょ!


春斗:

いや、いや、明美ちゃんも雪菜ちゃんも大事な友達だよ?

けど彼女とかそういうんじゃ、


明美:

春斗くんはね、あたしの作ったカップケーキが大好きなんだから!

いつも「おいしいね」って食べてくれるんだからね!


雪菜:

あーあー、お菓子が作れるから料理上手ーとか勘違いしてる系ね!

それが喜ばれるのは若いうちだけだから!


明美:

ちょっと頑張ればシチューだって作れますー!


雪菜:

はーいはいはい、「はいこれ手作りのクッキー、こっちはグラタン、ポテサラもあるわね」って胸やけするわ! 悔しかったら肉じゃがくらい作って見せなさいよ!


明美:

材料変わってるだけじゃん! 和風にしてるだけじゃん!

手順なんか大して変わってないでしょーよ!


雪菜:

私はお掃除お洗濯だって完璧だし!


明美:

完璧だからなによ! できる女は口うるさいしね!

ちょっと物を置いただけで「散らかさないで!」とかさあ!


雪菜:

あんたは、お片付けもできなさそうよね!


明美:

とにかく春斗くんから離れてよ女狐めぎつね


雪菜:

あんたが離れなさいよ、ドロボウ猫!


明美:

むきーーー!


雪菜:

むぎいぃぃ!


春斗:

あああ、古典的なキャットファイトが始まってしまった……。


明美:

何言ってるの、狐はネコじゃないから。どっちかっていうとイヌだから。


雪菜:

人のものをかすめ盗るようなドロボウ猫が、ケンカに勝てるわけないじゃない。


春斗:

ええ……そこ?


明美:

ていうかね、春斗くん。無関係みたいな顔してちゃダメよ。


春斗:

えッ?


雪菜:

そうよ。つまり、どっちが好きなの?


春斗:

えぇ……。


明美:

春斗くんが優柔不断だから、女同士が争わなくちゃならないんだからね!


春斗:

いや、だから、


雪菜:

どっちが好きなの!?


春斗:

どっちも好きです! けど、あの、


明美:

決められないなら分けるよ!


春斗:

え、何を。


明美:

春斗くんの体を。ふたつに。


春斗:

斬られる! ……あの、じゃあ、もし、もしも、どっちかを選んだら……、


雪菜:

選んだ女を、ヤる。


明美:

ヤるわ。


春斗:

どちらにせよ猟奇的な展開だね!?

どっちも選ばないって選択肢がほしいんだけど!


明美:

それは、二人とも嫌いってこと……?


雪菜:

春斗くんに……嫌われた……。


春斗:

え、いや、


明美:

二人で死のうか、雪菜……。


雪菜:

そうだね、明美……。


春斗:

まってーーー! これ八方ふさがりーーー!

あの、あのね! 選ばないイコール嫌いって事じゃないから!

でも、好きが全部恋愛ってわけでもなくてね!


明美:

じゃあ、他に好きな人がいるの……?


雪菜:

誰かと、もう付き合ってるの……?


春斗:

え、あ、いや……。

(※コソコソと)誰の名前言ってもその子が危なくなるじゃん、これ!

けど誰とも付き合ってないって言ってもふりだしに戻るだけだし……

えええええ……


明美:

誰!?


雪菜:

どこにいるの!?


春斗:

いや、あの、あの……あ、あー!

こいつ! 俺、実はこいつと付き合ってるんだ!


正樹:

は?


明美:

え、え? 正樹くん!?


雪菜:

まさに偶然通りかかったところを、ひっつかまえたように見えたけど、正樹くん!?


春斗:

そ、そうなんだよ!

えっと、昨日、いや、おととい……んにゃ、一週間くらい前、だったかなー?

……から、俺たち付き合ってんの!


正樹:

は?


明美:

そうなの?


雪菜:

正樹くん、春斗くんと付き合ってるの!?


正樹:

……。


明美:

正樹くんが黙ってるってことは、そうなんだね……。


雪菜:

正樹くん、いつも静かだけど、違ってることは否定するもんね……。


春斗:

うん、うん、そうなんだよ!

あ、あの……


明美:

じゃあまあ、しょうがないかー。


春斗:

え?


雪菜:

正樹くんじゃ仕方ないわ。


春斗:

え? ……ヤらないの?


明美:

あたし、正樹くんの事だって好きだもん。

ていうか、ヤるなんて物騒なこと言わないでほしいなぁ。

あたしそんな野蛮な女じゃないからね、ねー正樹くん!


雪菜:

男の子同士が本気でお付き合いしてるなら、私たち女はそっと身を引くだけよ。


明美:

だよねー。


雪菜:

そうよね。


春斗:

あれえ……?


明美:

じゃあ行こっか、雪菜。正樹くん、春斗くんの事、大事にしてあげてねー。


雪菜:

そうね、行きましょう。お幸せにね、ふたりとも。


明美:

じゃあね、ばいばーい。


雪菜:

さよなら。またね。


春斗:

えええー……


(※間をおいて)


正樹:

……で?


春斗:

いや、まあ、はい。で、かくかくしかじかで、もし本当に万が一のことがあっても、お前なら、何とかなるかなって……とっさに。


正樹:

もしも彼女らが本当に、なにか危害を加えようとしても?


春斗:

そうです……。

ほら、正樹って何とか武術だとか空手だとか、とにかく強いからさ、護身術もかなり身につけてるし、寝込み襲われても無事かなって……。


正樹:

要約すると、俺は通りすがりに流れ弾に当たって、命の危険にもさらされていたと。


春斗:

ざっくり言うと……はい。


正樹:

ざっくり言わなくてもそうだろうが。


春斗:

あ、いたた、痛い、こめかみはだめです、いたたた。

……で、あの、正座、くずしていい?


正樹:

だめだ。


春斗:

はい……。


正樹:

よくもとっさにそんな大嘘を思いつくな。


春斗:

いやホントごめん。とりあえずお前に彼女がいないの知ってたし、今は誰かと付き合う気がないとも言ってたし、つい……。

うーん、これが噂になったら、いや、多分なるよなぁ……。


正樹:

別に噂なんざ構わねえよ。


春斗:

え、そうなの?


正樹:

噂は噂。真実は真実だ。どれだけ嘘が広まろうが知ったことじゃない。


春斗:

心が強いわぁ……。

でもあの、当面その、もし噂が広まっても、否定するとウソの意味がなくなっちゃうわけで……。


正樹:

それも別にかまわん。否定はしない。


春斗:

そうなの!?


正樹:

お前の女よけになるならちょうどいいしな。


春斗:

え? なんで俺の? え?


正樹:

お前……本当に自覚なかったのか。


春斗:

なんの。え、まさかお前、本当に俺のこと……。


正樹:

……(ため息)

毎度毎度! お前がどこぞの女に気に入られるたびに!

やれ俺もまじえてダブルデートしようだの、合コンに誘ってくれだの、あわよくば紹介してくれだの、さんざん巻き込みやがって!

お前が誰と何をしようが勝手だが、お前は、何回俺に「一生のお願い!」とかほざきやがったか、憶えてねーのか!


春斗:

あーそっちー! ですよねー!

で、でもそれは、お前がそう言われるようなモテ素材を持っているからであって……、


正樹:

ああ?


春斗:

……すみません。


正樹:

大体お前は、女に愛想を振りまきすぎるからこういうことになるんだ。

誤解されるような態度はつつしめ。


春斗:

いや俺だって!

今は彼女とかそういうね、ひとりの子に縛られるより、まだ友達として男とも女の子とも遊んでたかったからさ!

こう、少し引いた感じで?

営業スマイルなんかで当たりさわりなく接してたつもりだよ!?


正樹:

いいことを教えてやる。

営業スマイルってのはな。好印象を与えるためにするもんなんだよ。


春斗:

あ、あう……。


正樹:

あと聞くがな? 春斗、そういうお前は、愛想笑いと本当の笑顔を見分けられるのか?


春斗:

あううう……。


正樹:

成り行き上、仕方ない。

こっちとしても好都合だから協力はしてやる。ただでとは言わせないがな。


春斗:

え、俺、何させられるの? お金とかあんまりないよ?


正樹:

これからじっくり考える。とりあえずのところは、しばらくそこで反省しろ。


春斗:

あの、俺、少しお腹がすいたなって、


正樹:

ほう?


春斗:

いったーーーーーい!


(※間をおいて)


明美:

まーねぇ、相手が正樹くんじゃねーえ。イケメンすぎて太刀打ちできないわ。


雪菜:

なによ。明美、正樹くんが本命?


明美:

正樹くんは無理だよ。イケメンだけど、すごいクールだし。


雪菜:

頭もいいし運動も大抵のものはこなすけど、無口で近寄りがたい存在だから、正樹くんよりは春斗くんみたいな、やわらかめな人の方に寄って行きやすいのよね。


明美:

陰では正樹くんもモテてるんだけどねー。

けど春斗くんはさ、自覚がないから困るのよ。


雪菜:

そうよね。

あっちこっち老若男女引き付けるタイプのくせに、誰にでもあの笑顔振りまくんだもの。


明美:

ていうか、あれ、本当だと思う?


雪菜:

あの二人が付き合っているかどうかって?


明美:

そう。


雪菜:

知らないわ、そんなの。

けどあの二人がそういう事にしたっていうなら、多分もう手は出せないわ。


明美:

だよねぇ。鉄壁の防御かためられた感じ。


雪菜:

でもまあ、女にとられるんじゃないならいいわ。男でもペットでも。


明美:

あたしは……ペットでもダメだわ。


雪菜:

心せまいわね!


明美:

あんたに言われたくないわ!

だって、考えてもみてよ!

もしもよ、彼の部屋とかで、台所借りてお昼ごはんでも作ってるとするじゃない!

それで、さあ出来たわよーってお料理持っていったら、彼の膝の上で、例えばメス猫が、ゴロゴロと撫でられてるのよ!?

で、そういうときの彼の目ったらそりゃあ慈しみに満ちていて、メス猫は絶対勝ち誇った目でこっちを見るのよ!


雪菜:

妄想がすごいわ……じゃあ、その猫がオスなら?


明美:

それは許す。


雪菜:

許すのね。……犬なら?


明美:

犬でもメスはだめ。ハムスターなら……メスでもギリ大丈夫?


雪菜:

まあね……女なんてそんなものよね。


明美:

そう。生まれ持った性質なのよ。

女は女をライバル視するし、蹴落とそうとするのよ。


雪菜:

反論は許さないわ。


明美:

誰に言ってるの。


雪菜:

この世のすべての女に。


明美:

わあ、こわーい!

あーでも、それもこれも春斗くんが素敵だからいけないんだよね。


雪菜:

春斗くんを前にすれば、すべての女は、なぎ払うべき敵となるのよ。


明美:

ああ~、あの笑顔が罪深い……。


雪菜:

はあ……ついでに正樹くんも罪深い……。


明美:

あの二人なら、見てるだけでごはんが進むし。


雪菜:

新陳代謝が氾濫(はんらん)起こしてお肌もつやつやだし。


明美:

尊い……。


雪菜:

尊い……。


・・・・・・


春斗:

えっくし!


正樹:

なんだ? 風邪か?


春斗:

いやなんか、すごくかたよった層の女子から、噂されてるような気が。


正樹:

それは自業自得だな。


春斗:

俺、そんなに悪いことしたかなー?

なんか俺がどうってより、女の子が複数そろうとケンカを楽しみ始める、みたいな気が……。


正樹:

んな事はどうでもいい。

お前は俺を女の殺意の対象にしようとしたことを反省しろ。


春斗:

反省します! しました!

あの、それで、そろそろ正座、くずしていい?


正樹:だめだ。


春斗:

ぴえええぇぇ……。


・・・・・・


明美:

どうせならあの二人、ホントのホントにくっついちゃってればいいのにね。


雪菜:

そうね~、それが一番平和よね。


明美:

もしそうじゃないならぁ~、しちゃう?


雪菜:

私達で?


明美:

本物に?


雪菜:

しちゃう~?


明美:

んふふふ。


雪菜:

うふふふふふふふ……。


・・・・・・


春斗:

びえーーーーーっくし!


END

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