幕間 ニックネーム

「小南ってあだ名とかないの?」


 ある日の休み時間、何故か俺の机の周りに集まる奴らがあだ名の話題を口にした。このクラスで一番の美人の横溝さんがエンジェルさんと一部の男子から呼ばれているのだとか。率直にキモい。

 正直俺はこの名前があるから極力避けたい話題ではあるのだが、ここで露骨に逃げると逆にツッコまれかねない。適当に話を合わせている内に兼田が、冒頭のように尋ねてしまった。


「うーん、僕は小南でコナンって呼ばれてたこともあったけど、結構微妙じゃない?」


「いいじゃん名探偵。眼鏡だし割と似てる」


「見た目も大人だよボクは」


「チビじゃん」


「人権ください」


 泣きまねして落ち込む小南改めコナン君。兼田は一回炎上してろ。


「そういう兼田は何かないのか?」


 ジジョーが問いかける。


「残念ながら特にないなぁ」


 芳しい成果は帰って来なかった。それを不満に思ったジジョーは提案を持ちかけた。


「だったらなんかつけてやろう!」


「ロリコン」

「ノンデリ」

「ネコカブリ」


 俺、小南、ジジョーの声が重なる。


「誹謗中傷やめろ!名前にちなめよ!」


「えー、ケンダ」


 だるそうに小南が言う。


「雑すぎる」


「ケンダイチ」


「名探偵に引っ張られてるって」


 俺のボソっと言った案もお気に召さないらしい。しかし特にこれといった案もなく暫定兼田一少年の事件簿となった。


「九重も名探偵要素ないか探そうぜ」


 兼田改めケンダイチ少年が矛先を変える。もはや趣旨が変わってしまっている。


「いいよ俺はジジョーで」


「九だし探偵学園Qでは?」


「もはやこじつけだよ」


 兼田の閃きに小南が却下を出す。

 そしていよいよ矛先がこちらに向いた。



「じゃあ花籠はどうする?」


「決まってるだろ」


「ね」


「は?」


 そして三人は口を揃えて言った。


「名探偵ピカチュウ!」


 三人は声をあげて大笑いしくさった。


「遂にイジって来やがったな絶対許さん殺してやる」


「殺人事件だ、おい名探偵の出番だぞ」


「凶器は尻尾だね。はがね技で一刀両断だ」


「いや、ガイシャにまだ息がある。おいピカチュウ、急いでAEDを……いや、でんきショックだ」


「上等だ表出ろ貴様らブッ殺してやんよ!!」


 そんな休み時間の一コマ。





──────────

作者より

みんなへ


幕間はゆるゆる書いてます

なんなら全編ゆるゆる書いてます

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る