第2話 イカサマ師は人の目を気にしてる

イカサマ。それは賭場において御法度であり常識である。しないやつはいないし、やるやつを見つけるのは至難の業である。イカサマ防止など四肢切断してもできないだろう。


つまり、賭場とはイカサマで勝負する場所だ。



俺は賭場の真ん中で周囲を見渡していた。丁半、チンチロ、ポーカー、ルーレット色々あるがここはどっちかというと西洋風なんだろう。丁半やチンチロこそあるがあまり人は入っていない。決め手はウェイトレスがいることだ。イカサマ防止に置かれてるのが建前っぽいがこれをイカサマに使うこともできる。


「さて、何をしようかね。」


迷ってる雰囲気を出していると声をかけてくる老人がいた。


「あんた、見たことないな。初めてかい。ならこれがおすすめじゃよ。ほれなんならチップあげようか。」


そう言って老人は赤チップ二十枚を渡してきた。

いくらするのかは知らないがただで金をもらえたのだからラッキーだ。


さて、では何から始めようか。


俺はルーレットに向かった。


「ん?あんたもやるのかい?見ない顔だね、初心者か。ルールはわかるかい?」

「ああ、良くわかってる。ベットしていいか?」

「え。ああまだ回してないから早くベットしな。」

「わかった、2に一枚。」


赤色のチップを一まだけ置くと場の空気が固まった。


「赤チップ。お前さん生粋の博打打ちだね?まあいい君の運が今ここでわかる。ディーラーさん全員賭け終えた、回しておくれ。」


ディーラーは無言でルーレットの玉を転がす。

カラッ、カラッ、カ、カ、カ

2、2に止まった。

「おお、やるねぇ。兄ちゃんのビギナーズラックってやつかな?」

「違う。実力だ。ほら次行くぞ。25に三枚。」

「そう簡単に行くかな?1、4、2、5、3、6に黄三枚」


またルーレットが回る。

確実に25コースだ。いける。


そう思った瞬間だった。一瞬玉が止まった気がした。目を擦ってルーレットを見てみると2に入ってる。


「ありゃ。惜しかったね。お兄さん。俺が賭けたのが三枚でよかったねぇ」


嘘だろ。おかしい、これはイカサマだ。でもどうやって、磁石を持ってる様子もない、どうやって。


その時初めて顔を見た。


端的にいうと人間ではなかった。人間以外に二足歩行して日本語喋る動物は見たことない。いや、なかったが正しい。


しかし、その場ではそんなことはどうでもよかった。俺はこのイカサマについて知りたかった。


が、俺は怖かった。何か知ってはいけないことに足を突っ込もうとしている感覚になった。


俺は博打打ちだ。知りたければ見抜く、聞くなんて子供のすることだ。こんな笑みを浮かべられてそそくさと逃げるなんて相手の思う壺だ。


「おい。」

「ん?なんだね?怖気付いたのかい?」

「怖気付くなんて言語道断。燃えて来るってもんよ。」

「ほう、その心意気はよし、だがどうやって勝ち続けるつもりかね?」

「勝ち?一発勝負だよ。2に全額ベットだ。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

場所が変わっても賭場さえあれば俺は生きていける。〜異世界賭場戦記〜 桔梗 遊 @kikyou0128

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ