第9話 ハイジャックの達人の子

 警察に相談したパイロットは、再びパソコンの画面を見た。すると、何やら購入画面に進んでいた。

「何でよ」

不可解だ。何もかもが不可解だ。なぜ、何もしていないのに購入画面に進むのだ。

と、思うときちんと理由が書いてあった。

『その商品の画面を2分放置すると、購入画面に進みます。情報の未入力のまま、30秒が経過すると、購入が完了します』

文章は、意味不明だった。だって、そうだろう。なぜ自動的に購入画面に進む。しかも、個人情報未入力のままなのに、なぜ購入完了になるのだ。

と、そんなことを考えている間に、30秒は経っていたらしい。

『購入が完了しました。商品の到着まで少々お待ちください』

不可解な商品購入は終わった。


その後にLINE電話があった。警察本部からだった。

「こんにちは。犯人を追う準備ができ次第、捜査を開始します。魂コレクターズというサイトに関しては、糸賀従動しがじゅうどうという中堅が対応します。今後、魂コレクターズにはアクセスしないよう、お願い致します」

「お疲れ様です。了解しました、アクセスしないようにしますね」

「・・・・・はい」

間が開くのも当然だ。そりゃあ、さっき購入した、いや、させられてしまったばかりなのだから。

だが、別に言っても信じてくれないだろうと思い、言わなかった。


その夜のことだった。パイロット仲間と食事に誘われていたから、家を出る。すると、ドアに何かがつっかえるのが分かった。

「なに。ここに誰か置いたの?」

すると、そこに置いてあったのは段ボールだった。

「誰、ここに置いたの」

すると、それはパイロット宛だった。なぜか印鑑も押されている。

「なんでよ」

でも、あるのはあるのだ。

パイロットは、一度その段ボールを部屋の中に入れた。そして、開けた。


「うおおおおおおお!!!!」

ビックリしたのも無理はない。なぜって、しっかりと人が中にいたのだから。

「だ、大丈夫ですか?!」

そう思って、体を起こそうとすると、そのものの体は透けていた。おかげで、おでこを段ボールにぶつけてしまった。

「・・・・・hello. My name is Kate《私はケイトといいます》」

ケイトと名乗る、青い目の子供は英語で続けた。

「He is the son of a father who is good at hijacking《ハイジャックが得意な父の息子です》.The British incident that came to the news the other day was done by my father《この前ニュースになったイギリスの事件は父が行ったものです》」

取り合えず、翻訳アプリで会話すると、恐ろしい事実を語っているのが分かった。

「Thanks to that, I died《おかげで僕は死にました》」

・・・・・そんな子の魂が届いていた、ということだったのか。

チキチキンのものが届くはずだったのが、ミスで届いたのだろう。いや、女性パイロットのために仕掛けられたものだったのかもしれない。

「Help me. please《助けてください。お願いします》」

青い目のケイトは泣きながら、だんだん透明になっていく。

「タスケテ!」

最後に、日本語で私に向かって叫んだ。助けてやりたかった。だが、そうはいかずに、彼は消滅した。

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