揺れた心の行方

かすみとの約束までの、一週間

毎日のように、タバコ吸いに散歩した。

時には、ユミと電話しながら

時には、何も考えず

本当は、またかすみに会えるのでは無いかと期待をしてたのかもれない。

ただあの日から、一週間かすみとは、会えなかった。


その間にユミと久しぶりに会った。

色んな気持ちを確かめたかったのかもしれない。


「マサト?最近仕事はどお?」


「仕事?普通だよ、何も変わらないよ」


「私生活はうまくいってる?」


何気ない普段通りの会話

それなのに、今日も心はそこにはなかった。


「そうだね、なにも変わらないよ…変わらない毎日だよ」


変わらないのは、自分が変えようとしてないからだと言うとも、本当はわかって居た。


「そうね、私もなーんにも変わらない…

変わらなさすぎて、今日もまた、自分が嫌になっちゃう…

私達は[特別]な繋がりでずっと繋がってる、それはこれからも変われないよね?」


「…うん、そうだね…」


いつから、素直に喜べなくなったのだろう。

[特別]とはなんだろう

この世で唯一お互いが自分を隠さなくていい

それに心を救われたのは、嘘じゃない。

嬉しかった事

好きだと言われた時の高揚感

全てその時感じた喜びや、幸せは嘘じゃない。

世界で二人だけ違くて、二人しかわからない世界は、醜くも素敵だったのも、嘘じゃない。

それなのに、今

目の前に居る[特別]な存在だったユミは

今の自分から見て、なぜ輝いて居ないだろう。


「これからもずっと一緒に…」


ユミが、次に何を言うかはわかって居た

それなのに今日はその言葉を聞きたくなくて

話す前に、強く抱きしめた。


「大丈夫、大丈夫だから」


「ありがとマサト…」


大丈夫と言う言葉が

ユミに対してだったのか

自分に対してだったのか

それがわかるまで

時間はそんなに必要なかった。

ユミを家まで送り届け

また考えた。

何が正解なのかと

自分の世界

ユミの世界

二人の世界

歪な二人の関係の中で、本当に二人で死ねる日が来るのか

本当にそれをお互い望んでいるのかを…




そして一週間が過ぎ、

約束の時間の少し早く待ち合わせ場所に着いた。

このなんとも言えない気持ちはなんなのだろう

自分の醜さがバレてしまう事に恐れているのか

また偽りながら接していく事を恐れているのか

それだけじゃないはずだ


そして遠くにかすみの姿が見えた時

心臓の音は高まり

なんとも言えない気持ちだった。

不思議な気持ち

こんなに美しい鐘の音が自分も聞こえるのだと言う事が、少しだけ嬉しかった。


大きく手を振るかすみ

それをみて自然と

大きく手を振りかえす

自分が居た。

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