複雑

「お待たせ!はいこれ!」

差し出された冷えた缶チューハイ


「ありがとうございます」


「じゃー乾杯しようか」


チューハイを開けると、炭酸が吹き出した


「あっ、ちょっと、すみません!」

いきなり飛び出したチューハイに、焦りを隠せなかった。

そして慌てて啜った。


「あー面白い笑

ごめんね悪戯して笑

お腹痛いよマサト君笑」



かすみは、お腹を抱えて大笑いしていた。



「ちょっと悪戯って!わざとやったんですか!?」



つられて笑ってしまったが、思わず少し強い口調になってしまった事に、申し訳なさを感じた。



「ごめんごめん!笑

どんな反応するのかなーって笑」


「酷いですよ!かすみさん笑」


「なんか、マサト君不思議で笑

あーもう、久しぶりにこんなに笑ったよ笑

はい!乾杯!」


悪戯に成功したかすみは、ご満悦で、とても楽しそうに笑っていた。


「やめてくださいよ笑

まぁでも、いただきます!」


改めて缶チューハイで乾杯し、もう一本タバコに火をつけた。

こんなにも笑ったのはいつぶりだろう。

なんの偽りのない、笑顔を人に見せるのは、少しだけ罪悪感を感じた。

自分だけ、いいのかと…


「マサト君は、毎日お店でてるの??」


「そうですね、定休日以外は出てますよ」

不思議と笑みが溢れる


「来週の休みの日予定あいてる??」

なんでこんな質問をされてるのかもわからなかったが


「あいてますよ」


会話の流れの中で答えてしまった。

内心怖かった

本当の自分がバレるのではないか

本当の自分が理解などされないことが。


「もしよかったら軽く飲みに行かない?」


「あまり強くないですけど、大丈夫ですか?」


「うんもちろん!少しだけ付き合ってよ笑」


「わかりました、来週ですね

今日はご馳走様でした、少し悪戯された時は、ムッとしてすみませんでした。」


「ありがとマサト君笑

別にいいわよ、そんな事、気にしないで笑

私こそ、沢山笑っちゃってごめんね笑

あっ、一週間後の18時にこのコンビニで待ち合わせしましょう!」


「わかりました、では来週の月曜日ここでまってます」



なんて事ない、何気ない会話

途中から、少しだけ心のハードルが下がってしまった自分がいた。

怖い気持ちと、どこか少し心躍る自分の気持ちが交わり

複雑な気持ちのまま、帰路についた。

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