第27話

 


「レオ、あれ何?」

「レオ、あのお店行ってみたい」

「レオ、あれは何してるの?」などなど…



 ミルアと王都を散策という名の観光をしてる。興味深いものや見た事ないものがあったらミルアは積極的に聞いてくる。

 僕でも答えられるもなら答えてるけど分からないのも何個かあった。


 そして、今はやや遅めのお昼を食べている。宿に戻ってお昼をいただくのも別にいいのだが、ララさんには『朝と夜だけ食べます』と伝えてあるので今から行っても食べられないだろう。ちゃんとお金を払えば食べられるけどね。


「結局何も買わなかったけどミルアは良かったの?」


「うん、欲しいやつも特に無かった。でも、魔道具は便利だなと思った」


「魔道具か〜」


 魔道具は言わば、無機物に魔法の術式を組み込んだ道具だ。そこに魔力を流すと中に組み込まれてる術式に流れ、魔法が発動する仕組みだ。

 魔法を使えない人でも気軽に使えるのでとても人気だ。しかし、総じて高い。

 一番安いやつでも金貨数枚…かな?それに大きいのだ。人の頭ほどある魔道具もある。

 小型化に成功した魔道具も流通しているのだが、高い。金貨ではなく更に上の王聖貨が必要になる。しかし、その分組み込まれた術式は強い。さらに、小型なので相手に悟られずに魔法を発動させることが可能なのだ。

 一時期僕も魔道具を購入しようかと思ったが…高かったのでやめた。それに、今は魔法と言えばミルアが居るしね。


「ミルアは欲しい?」


「いらない、強いて言うなら…快適魔法系の魔道具が欲しい。私は使えないから…というより覚えてない」


「たしかにあったほうが楽かもね…でも、ミルアなら覚えられそうだけどね?」


 快適魔法の清潔化や消臭など…とても便利な魔法だからね。


「覚える。…ん、ごちそーさま」


「僕も出来るのなら覚えてみよっかな?…んぐ、ご馳走様でした。

 さて、どうしよっか…」


「うーん…適当に歩きたい」


「分かった。じゃあ、行こうか」


「ん」


 僕とミルアは立ち上がり何の目的もなく王都内を歩き回る。



 ◆



「…ミルア、なんか面倒臭い奴が僕たちをつけてる」


 二人…か?ずっと前から僕たちの背後をついてきてる。


「ほんと?………どうする?」


「そうだね…向こうの路地に行って返り討ちにしよっか」


「ん」



 僕とミルアは特に気付いてないふりして路地へと自然に入り、待ち構える。


 やがて、タッタッタッと通りを歩いている人のゆっくりとした足音とは違い走ってくる音が段々とこちらは近づいてくるのが分かる。


「ミルア、少し嫌がらせをしようか。少しだけバレないように足を伸ばして」


「?うん」



 足音が大きくなりやがて目の前に影が生えてきた。そして、同時に声も聞こえてきた。


「逃げられたか?」


「流石につけすぎたか?バレた可能性があるな」


「そうかっあがっ!?」


「どうしっどぁ!?」


 綺麗に僕とミルアが出した足に引っかかって、ゴツン!と音を立てて綺麗にコケた。


「ってぇ!」


 僕は剣を抜き、男達に向けた。


「何者だ。先程からずっと僕たちの背後をついてきて」


「っ!なんであんなのにこけたんだよ!」


「知るかぁ!」


「やかましい。喚くな、要求に応えろ。そうしたら命は助けてやる」


「「ひっ!」」


 喧嘩を始めた馬鹿二人に少し殺気を放って黙らせる。


「もう一度聞く、何故僕たちを?」


「そ、それはお前らが金を持ってるからだ!!」


 怯えながらも答えてくれた。ただ、それが本当なのかどうかは分からないが。


「へぇ、なんで僕たちが金を持ってると思った?」


「……聞いたんだよ」


「誰に?」


「女だ、女。名前も知らない女だよ…そいつがお前らが金を持ってるから奪えって」


 女か……しかし、僕たちが金を持ってる事を知ってる事は冒険者組合の関係者だろう…となると、女性の冒険者か受付だな。

 大賢者様は除外するけどね…あの人が金を欲しがるのなら誰だって遠慮せずにどうぞどうぞ、って渡すからね。


「お前達は他にも同じことを?」


「あぁ、何度もある。ゴールド冒険者だって行けたらから油断してた…今回も余裕だと思って警戒せずに行ったのが…くそ」


 ゴールド冒険者にも同じことをして、成功したのか。となると、こいつらかなりの実力者の可能性が高い。…でも、そんな奴らがあんな無様にこけるとは思わないが。


「お前らは何者だ?」


「お、俺は……「おい!言うな!」っだって、言わないと死ぬぞ!「それでもだ、これ以上情報を渡したらこの後に俺らが殺されるだけだ」…っ」


 訳あり、ね。まぁ、なんとなく分かったしもういいか。


「ミルア、こいつらを拘束できる?」


「少し怪我させるけどいい?」


「んー、大丈夫だよ。頑丈でしょ」


「分かった。岩の拘束」


 男達の体を腕ごと拘束するように岩石が生まれた。硬そうだな…


 男達は動こうとしてるが拘束のせいでゴロゴロと転がることしか出来ない。


「じゃ、組合に行こうか」


「ん」


 そのまま男二人を持ち上げて僕とミルアは先程の事を話すために組合へと向かう。


「…力持ち」


「レベルのお陰だけどね。じゃなかったらこんな腕じゃ無理だよ。頑張ったら一人はいけるかもしれないけどね」


「今度私も持ち上げて」


「え…ま、まぁいいけど。どうした?幼児退行…あっ、なんでもない」


「全部言った。幼児退行って、私幼児?」


「…さ、さー!早く組合へ行ってこいつらの事を話そうか」


「……」





 僕は謎の圧を放っているミルアから逃げるように組合へと早足で歩いた。

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