第28話

 



「で、そいつらがお前らを狙いに定めて仕掛けようと思ったが…返り討ちって言っていいのか知らんが、逆に倒したんだな」


「はい」


 現在、何故かギルマスに先ほどの事を話してる。本当は受付さんに話そうかと思って、話してたらどうやら僕が思っていたよりもこいつらの存在は前から追われていたらしい。

 見つけたら捕らえる、と王都の組合では一瞬の依頼となっていたと聞いた。しかし、それでも見つける事は出来ても捕らえる事は出来なかったようだ。見つけた冒険者の殆どが返り討ちにあっているからだ。

 金級ゴールド冒険者を倒す実力があるからね〜、こいつらは。…ゴールド以外の冒険者では勝てないだろう。ちなみに、捕らえた二人は今頃…牢獄の中かな?


 まぁ、それはさておき…今はギルマスだ。


「ようやく、か……よくやってくれた。レオとミルア。今回こいつらを捕らえてくれた報酬は渡す。今がいいか?それとも後がいいか」


「そうですね……いえ、今貰ってもいいですか?」


「分かった、準備させよう」


「ありがとうございます」


 ギルマスが何かをした感じがしたが…よくわからなかった。気のせいか?それとも、準備とやら?…分からん。


「話は変わるが、レオとミルア。お前らはいつまでここに居るつもりだ?」


 突然、ギルマスからそう問われ言葉の意味が一瞬の理解出来なかったが遅れて理解した。


「…元々僕たちは魔鉄級ミスリルになるためにここへ来ました。そして、その目的も達成しましたので近いうちには王都を出ていくかもしれません」


「そうか。王都を出て行った後は?」


「元いた街に戻るつもりです」


「何処の街だ?」


「サーフィリーです」


 今更すぎるが…あの街の名前はサーフィリー。特に意味はない記憶がある。


「あそこか。最近近くに幼竜が出たと聞いたな。…二人とも、あと1ヶ月くらい王都に滞在してほしい」


 ギルマスの頼み事に僕とミルアは驚いた。


「理由を伺っても?」


「もちろんだ。近いうちに、近くのダンジョンで魔物の氾濫が起きると予想されている」


「っ!…スタンピードですか」


「あぁ」


 大賢者様の伝説にもある、スタンピードを一人で終わらせた話。

 近くの魔物の巣、もしくはダンジョン内の魔物が何かしらの理由で大量増殖・繁殖し、巣から溢れてしまう事だ。それがスタンピードと言われてる。

 脅威なのはその数、最低でも100、最高は過去の記録上では4万少し程。しかも、魔物の強さにはバラつきもある。

 スタンピードによって滅んだ街や国も少なくない。


「何やら兆候が見えてきてる。はぐれ魔物の発見率、遭遇率も高い。明らかにスタンピードが起こる直前の出来事だ」


 スタンピードが起きた場合、国の騎士、冒険者が総出で食い止める。そうしなければ国が滅ぶからだ。僕も一回だけ参加したことがある。…あの時は数も少なく敵が弱かったので良かった。


「だから、二人とも。お前らの実力はウチの組合中でも上位だ。スタンピードが終わるまで王都に滞在して欲しい。これはギルマスとしての頼み事ではなく、俺個人としての頼み事だ。死にたくなかったら逃げても構わない、誰も責める者はいない」



 ギルマスではなく、個人か………って、考えるまでもないか。



「分かりました。スタンピードが終わるまで王都に滞在しますよ」


「っ!本当か、それは助かる。高ランクの冒険者は多い方が嬉しい」


「特に目的もありませんから…あー、ミルアもそれで良かったか?」


 目的…あいつを探し出すというのも目的だけど、時間をかけて探そうと思ってるからね。


「うん、レオいる所に私あり」


 名言か何かかな?…迷言の間違いか。


「らしいです」


「はっはっは!!お似合いな冒険者だ」


 ギルマスが僕たち…いや、ミルアの言葉を聞いて笑った。恥ずかしいような嬉しいような…


「そういや、二人とも…宿泊まりか?」


「え?…あ、そうです」


「何処の宿に泊まってる…いや、失言だった。忘れてくれ」


「別に大丈夫ですが…」


「気にするな。それはさておき、知ってるかと思うが、魔鉄級ミスリル冒険者の恩恵についてもう一度話しておく」


「……はい」


 恩恵。あれかな?魔鉄鋼級アダマンタイト冒険者が街の出入りが無料とか、そういう?ミスリルにもあったのか。


「その顔は知らなかったのか?」


「はい」


「…大賢者から説明されなかったのか?」


「えぇ」


「…あのチビが。とうとう説明がめんどくなった上に組合の奴らに代わりに伝えさせることすらやめたか」


 …裏事情。というより、受付さんとかに代わりに説明とかさせてたんだ。


「あいつには後で言っておく。じゃあ、話すぞ。と、言っても1個しかないがな。

 1個目は、鍛冶屋、武器、防具、魔道具、食堂を除く全ての店で購入した金額の2割を組合が負担する」


「つまりポーションや保存食などですか」


「あぁ、購入時に証を見せたらそれでいい。ミスリルが受けられる恩恵はこれだけだ。アダマンタイトになったらまた色々と増えるがな…」


神魔鋼級オリハルコン冒険者はどうなるんですか?」


「知りたければ俺に聞かず自分で確かめろ」


「?…分かりました」


「…話は終わりだ。長々とすまなかった」


「いえ、僕は大丈夫でした。ミルアの方は分かりませんが……いえ、ダメでしたね」


 ミルアの方を見れば、船を漕いでいた。とても眠そうだ。


「…では、ギルマス。僕たちはこの辺で帰ることにします。ミルアを寝かさないと」


「そうだな」


 ミルアをそっと抱き上げて、部屋から退出し、そのまま宿へと帰りベットにミルアを寝かせた。


 道中、周りの人から送られる視線がとても恥ずかしかった。







ーー


またタイトル変更……でも、しっくり来るタイトルが思いつかない。


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