第7話
「レオ、貰わなくてよかったの?」
「うん、貰ったところで…って感じがしたからね。お金も別に困ってる訳じゃないから」
街まで運んだ幼生竜の死体は冒険者達に与えられた。…少し配分内容で揉めかけたがそんな意見は直ぐに収まった。
僕も幼生竜の目に大きな傷をつけたという事で死体の一部が配分されることになっていたが僕はそれを断った。
「それに、ミルアは良かったの?」
「私はいらない。使い道がない」
「…どうなんだろうね?」
実はミルアも幼生竜の動きを拘束し、今回の戦いに大きく貢献したということで死体の一部を配分されるとなったが、ミルアも僕と同じようにこれを断った。
「レオ、剣どうするの?」
「折れちゃったからねぇ、新しいのを探さないと」
幼生竜の攻撃を剣の腹でガードしたせいで刀身が折れてしまったからな。今は鞘に入っているが、見た目だけだ。早急に買い替えねばならない。
「この剣自体も普通の鋼の剣だからね」
そう思えば、よくこんなにもってくれたもんだ。確か…買ったのは3年前だっただろうか?
「今から見に行くか…ミルア、いいかな?」
「うん、いいよ」
ミルアの許可も貰ったことだし、鍛冶屋へと行くか。
◆
「アルフ爺さんいる?」
中に入ると客は居なかった。珍しいな…まぁ、たまにはあるか。それにしても、いつ来ても良い武器だらけだな…
「誰だ?…おぉ、レオか?どうした、また武器の手入れか?」
鍛冶屋の店主のアルフ爺さん。種族はドワーフと鍛治や細工、土木、建築などが得意だ。…万能さんだ。
僕の剣もこの人が打ったもので質はかなり良い。だからこそ3年も使えたのだろう。
「…んん?そっちの嬢ちゃんは?」
「嬢ちゃんじゃない。これでも14歳」
「む、すまんかった…して、レオとはどういう関係なんだ?」
「夫婦」
「んんっ!?んっ、ゲホッゲホッ…レオ?」
「いや、本当。ミルア、詳しく説明してあげて」
「うん。私は吸血族、この前お腹空いて森彷徨い獲物見つけたが逃げられレオに倒されてた。意識をそこで失い、次に目が覚めた時、レオが私にお腹が空いたの?って聞いてきたから私は生き血が欲しいって言ったらレオが僕のを飲ませてあげるよ、って言ってくれた。
それは、吸血族にとって求婚を意味することば。私はそれを受け入れた。こうして、夫婦になった」
そうなんだけど、そうじゃない感がある…
「なるほどな……おめでとう」
「アルフ爺さん?そろそろ本題に入っていいかな?」
「む、忘れたな」
「おい、ジジイ」
「がっはっはっ、褒め言葉だ」
…この爺さん、マジで……面倒臭い。
「んで、なんだ?」
「新しい剣を買いに来た。こいつが折れたからな」
俺は剣をアルフ爺さんに差し出した。
アルフ爺さんは剣を抜いて少し驚いたような顔をした。
「よくここまでもったものだ」
「え?どういう事だ」
「…そいつは後で言おう。これは、何やって折れた?」
「爺さんが知ってるかどうかは知らないけど、今日幼生竜が出てな…冒険者、サブギルマスが討伐した。詳しいことは説明するのめんどいから省くとして…幼生竜の攻撃を剣の腹でガードしたら折れてしまった」
「そりゃそうだ、新品ならいざ知らず、約3年も使い続けたんだ。何回も手入れし続けたんだ、武器も摩耗して脆くなる。その状態で幼生竜だ?折れるに決まってるだろ」
「やっぱりか?」
「あぁ、普通の鋼の剣だからな。いくら俺が打った剣といえど、鋼だ。ミスリルなどの魔法金属じゃねぇ」
「ふむ…なんか新しい剣を買いたいんだが、あるか?」
「今のお前にピッタリな剣か……普通の剣でいいだろ?」
「あぁ」
「なら……そうだ。一つ使って欲しい剣があるんだ。出来たばかりの品でな、少し面白い付与を施したんだ」
「へぇ…」
「そいつで一回試し切りしてみてくれ。場所はいつもの。使ってみて感想を教えてくれ」
「分かった」
「…レオ、私暇」
「「あ……」」
「………」
ごめん、ミルア。忘れた…
◆
「この剣を使ってくれ。剣に魔力を纏わせて攻撃時に爆発する」
「はぁ!?」
「使ってみろ」
「ったく…」
「レオ、気を付けて」
「…え?」
「なんか嫌な予感がする。回復魔法の準備だけしとく」
「凄く嫌になってきた……でも、やるか」
「ほれ」
アルフ爺さんから見た目は少し装飾が入った剣を受け取り、近くにある鉄が巻き付けられた的に構える。
「…魔力を剣に纏わせて攻撃?…はっ!!ぁぁ!?」
「レオ!?」
的に攻撃した瞬間、刀身が的に触れた瞬間爆発した。
「ゲホッ、ゲホッ……こほ、おいジジイ!!」
「レオ、大丈夫!?」
「あぁ、ありがとう…」
ミルアが近寄ってきて回復魔法をかけてくれる。
「おぉ、やはりそうなったか」
「なんだよ、これ…的に当たった瞬間爆発したぞ?」
「それはな原理は簡単だ。纏わせた魔力が敵を切った瞬間のみ付与の力で数倍まで魔力が膨れ上がって爆発する仕組みだ。威力を保証するが…やはり自分にもダメージが来るか。障壁を展開させて、自身へのダメージを無効化させるか?」
「おい、ダメじゃないか…」
「そうだな。よし、この武器はダメだな…レオ、実験に付き合ってくれてありがとう」
「実験!?」
「がっはっはっ。これは礼だ、持ってけ」
アルフ爺さんが一つの剣を投げてきた。鞘から引き抜くと薄紫色の刀身が見えた。
「っと、これは?」
「純粋に硬いアダマンタイト鋼で打った剣だ。…まぁ、欠点として魔力が通せないがな?」
アダマンタイト鋼って…確か、かなり高価な金属じゃなかったっけ?
「貰っていいの?」
「あぁ、その代わりこれからも実験に付き合ってくれ」
「…いいよ、それなら。それで良い剣を貰えるのならね」
「芯に竜の角を使って、周りをアダマンタイト鋼で固めている。折れることはまずない、罅も余程同じ場所に攻撃を喰らわない限り無いだろう。
前の剣より圧倒的に上だ。レオ、お前ならきっといい使い手になってくれるだろう」
「そこまで言ってもらえるのは嬉しいよ。遠慮なく貰ってくからね」
「おう」
「それじゃ、またいつか来るかも。ミルア、待たせてごめんね?行こっか」
「うん」
「いつでも来いよ」
貰った剣を腰に差し、ミルアと手を繋いで僕は宿へと帰った。中々良い剣をタダで貰えたのは良かった……実験は少し怖いが。
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