第11話 〈3月の海〉

 あっという間に、受験、卒業式、合格発表。


お互いに、志望校に合格できた。

入学式まで、いろいろ準備も忙しい。

卒業記念の旅行とかも行きたかったけど、本当にいろいろ忙しくて、近場で1日のんびりしようと、海に行くことにした。


3月の海は、人もまばらで静かだった。


「今度来る時は、水着買って海水浴って言ったけど、さすがに3月だからね」

「そりゃ、そうだな。今日のは、ノーカウント」


浜辺を歩いて貝殻を拾ったり、波に削られて丸くなってるかわいい石を拾ったりした。

砂浜に座り込んで、波音を聞いていた。


「しろちゃん、高校別々になっても、私たち 

続けられるの?」

ひざを抱えて、小さく言った。

「逆に、美月は続けられないと思ってんの?」

「もちろん、続けたいよ。続けたいけど」

「俺も、これで終わりなんてつもりないから。

夏にはまた、ここに、海水浴にこよう!

クリスマスは、ディズニーへリベンジしに行かなくちゃだし。

高校別々でも、続けられるって、俺は思ってるよ」

それを聞いて、涙が流れた。

悲しかったんじゃなくて、たぶん、嬉しかったんだ。

ホッとしたのかな。


「えっ!!なんで泣いてんの?俺、今 泣かせるようなこと言った?」

「うん、言った」

「えっ?何?ゴメン!」

「ウソ、言ってない」

「なんだよ~!」

「しろちゃんのこと、大好き」

「俺もだよ。だから、泣くなよ。俺が泣かしてるみたいに見えんじゃん。あはは!」


帰りの電車でも、普通にいつもの様に話をしながら帰ってきた。


「手紙書くよ、って、おかしいか!県外へ行くとかじゃなくて、お互いに家にいるんだからな。

じゃ、とりあえず、落ち着いたら家に電話するわ。

最初は、お互いに慣れるまでバタバタかもだから。まぁ、落ち着いたら、デートしよ!!」

「うん。電話待ってるね」



その電話が掛かってくることはなかった。

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