第12話 〈こじらせて22歳〉

 「ほんとに、処女なのって聞かれたから、語っちゃいましたけど、すみません、お待たせしてしまって」

「いや、いいよ。

なんで、自分から電話しなかったの?クリスマスまで待たないで、もっと早く」

「ですよね。ほんと、そう思います。

いつだったら、間にあったんだろうって。

しろちゃんが、落ち着いたら電話するって言ったから、とりあえず、しろちゃんから掛かってくるのを待ちたかったんですよね。

でも、夏に、私の誕生日に掛かってこなかった時点で、もう掛かってくることはないのか……ってだいぶ、確信しちゃったんですけどね。

だけど、それを確認する勇気がなかったんで」

「ふ〜ん。でも、なんなんだろうね。どうして電話してこなかったんだろ 彼」

「あ、だいぶあとで、人づてに聞いた話だと、高校入学してすぐに、しろちゃんに彼女が出来たそうです。すごく可愛い子で、猛アタックされたとか。

もう、その時点で、私とつきあってるなんて、飛んじゃってたんでしょうね。約束してたことも。

……私たち、手を繋いだこともなかったし、キスしたこともなくて。

だから、それって、ただ仲が良かった女友達レベルって感じで、私のことは 元カノとかにもカウントされてないんですよ。たぶん」

「付き合ってたのに、キスしなかったんだ?」

「そうなんですよ。

そもそもあれは、付き合ってたって言えるのかな?って思ったり……

もしも、クリスマスにディズニーランドへ行ってたら、とか、あの最後の海で、キスしてたら、

何か違ってたのかなとか、しててもなにも変わんなかったかな……とか……

まぁ、私の方は、だいぶ 引きずって、だいぶ こじらせて、22になっちゃいました。

もう、大学4年だし、卒業する前に、処女も卒業したくて。

すみません。気持ち悪い話で」

「いや、気持ち悪いなんてことないんだけど。

いいの?ほんとに?初対面の俺で」

「いいです。いいです。お願いします。

本当に、なんの知識もないので、私マグロみたいに横たわってるだけですけど、よろしくお願いします」

「それは、いいよ。こっちでリードするからさ」

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