第9話 〈言いたいこと、何も言えなかった〉

 しろちゃんと付き合って1年が経った。

毎日、学校帰りに公園に立ち寄って、話をしたり、月に一回くらいデートしたり、そんな付き合いだった。

そもそも私は、男子に免疫がなくて、今でも話が出来る男子は、しろちゃんだけって感じ。


 中3の秋なので、進路を決める時期になった。

考えてみたら、私はしろちゃんの成績とか知らなかった。

同じクラスだから、だいたい中くらいなのかな?って思ってはいたけど。


「しろちゃん、志望校ってどこ?」

「俺は南高かな」

「南……か……」

「美月は、頭良いし、北高に行くつもりだよね?」

「あ、うん。ちょっと厳しいかな~って感じだけど。一応、第一志望は北高にしてる」

「高校は、別々になっちゃうな」


そんなの……

嫌だよ……

しろちゃんと一緒の高校に行きたいよ!

私、南高まで落とせないけど、北高の1個下の西高になら下げてもいい。

しろちゃん、南高じゃなくて、もう少し頑張れば、西高に行けるんじゃないのかな?

一緒に勉強して、しろちゃん西高を目指すんだったら、私も北高諦めて、西高にするから!

って、

そう言いたかった……

でも、

それは、言えなかった……


「高校は別々になっちゃうな」


しろちゃんは、サラッと言った。


それでいいの?

しろちゃんは、私と別々の高校で平気なの?

私は、嫌だよ……

しろちゃんと一緒がいいよ……


「南高はさ、バスケの強豪校なんだよ。だから、そこでバスケやりたくて。レベルも俺の頭のレベルにあってるしね」


「そっか」


言いたいこと、何も言えなかった……


もしも、逆の立場だったら……

私なら、

しろちゃんと同じ高校に行く為に、猛勉強したんじゃないかな。

北高は無理でも、西高レベルにはあげられるかも。

でも、しろちゃんは あっさり諦めてる。

いや、諦めたわけでもなんでもなく、本当にバスケがやりたくて、南高に絶対に行きたいって思ってるのかもしれない。

それなら、きっとそれは、私が口を出すことじゃない。


「高校は別々になっちゃうな」 か……


しろちゃんが南高に決めているのなら、私の選択肢は2つ。

レベルを落として、しろちゃんと一緒の南高へ行く。

別々になっちゃうけど、勉強がんばって第一志望の北高へ行く。

そのどちらかだ。


悩んだ。

すごく悩んだけど、私は後者を選んだ。


学校別々になったとしても、遠距離恋愛になるわけじゃない。

学校から帰ってきてからでも、休みの日にでも、すぐに会えるんだから、お互いに志望校に入れるように頑張ろう!

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