第8話 〈来年は、水着を買って〉

 中3の6月、大会で負けた部から、ドンドンと3年生は引退になっていく。

私の女子バレー部は、地区大会ですぐに負けてしまったから、もう終わっていた。

しろちゃんの男子バスケットボール部は、一個上の大会まで勝ち進んだけど、そこで負けて終わった。


部活が終わったから、一緒に帰れるようになった。

けど、私の家と、しろちゃんちは完全な逆方向。

私の家まで送ってくよって、言ってくれたけど、それはちょっと遠慮した。

それで、学校近くの公園で、少し話をしてから、別々に帰ることにした。

いつも、6時までは部活だったから、そのくらいまでは平気かなって、公園で話していた。

今日の学校での出来事とか、テレビの話とか、しろちゃんが好きだってゆうアニメの話とか、他愛もない話だったけど、しろちゃんと一緒にいるだけで楽しかった。


7月が 私の誕生日。

8月が しろちゃんの誕生日。

お互いの誕生日が近かったし、夏休み中だったから、2人の誕生日の間をとってデートすることにした。

せっかくの夏休みだし、どこかちょっと遠くへ行こうかって、電車で海に行くことに決めた。

8月の海に行くなら、本来は海水浴なんだろうけど、水着はスクール水着しか持ってないし、しろちゃんの目の前に貧相な水着姿をさらすのは、絶対に絶対にイヤだったから、海に行くけど、泳ぎなしで、水族館とかにしようと言った。


「水着NGなの?ってか、水泳の授業で、ガッツリ見てるけどな~美月の水着姿は」

「わ~わ~わ~!!もう!しろちゃん!イジワルなこと言わないでよ!」

「イジワルじゃなくてさ。美月、泳ぎきれいじゃん!」

「あ、スイミング行ってたよ。小学校の時は」

「そうなんだ。だからか、きれいな泳ぎしてるな~って、マジでガン見!!」

「ガン見って、スケベ!!」

「あはは!男子はみんなそんなもんだよ」


結局、海には入らず、水族館へ行ったり、イカ焼きを食べたりして帰ってきた。


「俺、海に行って泳がないで帰ってくるの 初めてかも。

美月、来年はさ、一緒に水着買って、海で泳ごうよ!俺も、スクール水着しか持ってないから」


帰りの電車で、しろちゃんはそう言った。




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