第7話〈うちの犬に似てんな~って〉
最初の疑問がまた頭に浮かぶ。
私のどこを好きになってくれたのか。
それを直接聞くのは躊躇われたけど、付き合って半年経った頃 聞いてみた。
桜の花が満開で、近くの公園へ2人で お花見に行った。
「ね、しろちゃん!ずっと聞きたかったんだけど、私のどこを好きになってくれたの?」
「えっ?」
しろちゃんは立ち止まった。
ニコッと笑い
「きっかけは〜、ぶっちゃけ顔!」
「顔?私の顔が好みなの?」
「あはははは!怒らないでね。好みってゆうか、ウチの犬に似てんな〜って思って、入学式からずっと見てた」
「犬?」
「そ、肌が白くて、眉毛さがってて、目も垂れ目で、鼻も口もちっちゃくてさ。
入学式の日、髪をこうやって2つに結ってたじゃん!
それが、犬の耳っぽくて、マジでうちのシロ!!って思ったんだ」
「ってか、しろちゃんちの犬シロって名前なの?」
「そ、白山シロって、母さんがベタな名前つけてさ。中学入ったら、俺のことみんなしろちゃんって呼ぶから、犬じゃねーんだけどって思ってたよ」
「えっ、じゃ しろちゃんって呼ばれんの嫌な感じ?」
「あ、ううん、今は慣れたし、しろちゃんって呼ばれんの可愛くて好きだよ」
「あ、話 戻すけど、犬のシロに私が似てたから好きになったの?」
「シロに似てたから好きになったってわけじゃなくて。
似てたから気になって、よく見てたんだ。
美月は、大人しくて、目立つタイプじゃなくて、人前で率先して何かするって感じじゃなくて。
新村とか、バレー部の人たちとは仲良く話してるけど、男子とは全く話さない。
男ぎらい、とかなのかな?って、近づけなかった。
中2の春だったか、放課後忘れ物して教室へ戻ったら、美月が花の植木鉢に水をあげていた。
あ、この花って、仲田が水をあげてたんだ?って声かけようとしたらさ、あはははは!
美月、話し始めたんだよ!!花に!!」
「えっ?」
「どうしたの?なんか元気ないね?なんか、病気かな?とか、すごいキレイだね!とか、もうちょっとで咲きそうだね!楽しみ!とかさ」
「いやいやいやいや!もういいって!すごいヤバい人じゃん!!」
「ヤバい?あぁ、やべー!今 俺、惚れたわ!!って思った」
「は?そんな花に話しかけてるヤバい女に惚れたの?」
「うん、そう!!やべー!かわいい!!って思っちゃった。で、それからマジでずっと美月のこと見てたよ。席替えとかする度に、隣りになれますようにって思ってたけど、一回もなんねーし、同じ班にもなんねーの。
だから、ちょっとガマンできなくなって、告白しちゃった。あはは」
そんな風に思われていたなんて、全く知らなかった……
花に話しかけてるヤバい女を好きになってくれる人も、他にはいないだろう。
こんな私を好きになってくれた しろちゃん。
私にはもったいないくらいの良い人。
しろちゃんのことが大好きだ。
「しろちゃん、来年の春も、一緒に桜を見に来ようね!」
とても綺麗な桜だった。
来年も!
って、そう思っていた。
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