第4話 〈え~~~~ん〉

 付き合いはじめたばっかりの11月。

家庭科の調理実習中に、私はキュウリをスライサーでシャカシャカしていた。

ちょっと、その瞬間何をしたのかわからなかったけど、スパっと指を切って血が出た。

えっ?切断した?ってくらいすごく血が流れた。

周りの女子がキャーーーー!!って悲鳴をあげて、隣りにいたえみちゃんがハンカチで私の傷口を押さえてくれた。

先生が、傷口を押さえたまま心臓より高く手を挙げて!とか言うから右手を挙げると、血が手首を流てきて、白いかっぽう着が赤く染まった。


えみちゃんに付き添われて、保健室に行き、保健室の先生に処置してもらった。

大げさなほどの出血だったけど、傷口はたいしたことなくて、消毒して絆創膏を貼って、指に包帯をグルグル巻きにしたくらいで大丈夫だった。

医者に行くほどでもないって。

それで、なんか たぶんホッとしたのか、急に涙が溢れて、えみちゃんに抱きついて、子供みたいに え~~~~ん て泣いた。

えみちゃんは、よしよしって、頭を撫でてくれた。


そこへ ダン!と戸を開けて、飛び込むように 

しろちゃんが入ってきた。

「美月!!」

その顔は、血相を変えて走って来たって顔で、その顔を見て、私は更に一段と大声で泣いた。


先生が笑いながら、ホッとして泣いてるだけだから、心配しなくて大丈夫よ~って、しろちゃんに向かって言ってくれた。


「えっと~~……しろちゃんって、そうなの?」と、えみちゃんが私にか、しろちゃんにか わからないけど聞いた。

「新村、ありがとう……良かった。大した事なくて」

「はい、はい、じゃ、仲田さんは、もう少し保健室で安静にしてて。

新村さん、付き添ってくれて、ありがとうね。

じゃ、新村さんと白山君は次の授業に行きなさい」


じゃ、と2人は保健室を出て行った。

「授業終わった瞬間に調理実習室からダッシュで来たって感じね~。なんか、ちょっと意外な組み合わせだけど、いつから付き合ってるの?」

「先月からです」

「お!!それは、ホットだね!!あんまり、彼に心配かけないようにね」

「はい」


えみちゃんにも話してなかったし、驚いただろうな。

ちゃんと話さなきゃ。

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