第5話 〈初めてのデート〉

 白山君と付き合い始めて2ヶ月が経った12月、初めてデートすることになった。

クリスマスが平日だってゆうこともあって、クリスマスイブ、イブの天皇誕生日の祝日に映画を観に行こうかと言われた。

私は割と映画好き。

いつも、えみちゃんと行く。

しろちゃんがこれか、これが観たいと言った映画のうち、1つは先週えみちゃんと観たばかりだったし、もう1つは、冬休みになったら観に行こうよ~って話していたやつだった。

それをそのまま しろちゃんに言ったら、

「じゃ、新村とは絶対に観ないなってやつにしようよ」

って言ってくれた。

えみちゃんとは絶対に観ないなって思ったのは、ホラー系か、アクション系。

「じゃ、これにする?時間もちょうど10分後だし」


〈 悪夢の館 〉


これは、かなり怖いと評判のやつ。

怖そう……

えみちゃんとは、絶対に観ないな……

「キャッ!怖い!」って、抱きつくとか、手を握るとか、どさくさに紛れて、そんなのもありだったりして。

って私、考えが だいぶ不純だな。


観 終わった。

とにかく、ものすごく怖かった。

怖すぎて、途中 目をつむって、違うことを考えてたくらい。

手を握ることも、握られることもなく。

ただ恐怖に堪える時間だった。


映画館を出て、歩きながら

「美月、寝てた?」

と聞かれた。

「えっ?寝てないよ」

「ガッツリ目閉じて固まってたけど」

「あ、すごい怖くて、ちょっと現実逃避してた」

「あはははは。こんな怖いのに、すげー寝てる!って、ジッと見ちゃった。あはは」

「ほんと怖かったね~!怖すぎて、内容入ってこなかったよ」

「ほんとにな!思ってた何倍も怖かった。

斬られてんのに、気がつかないで喋ってるシーンとか、斬られた首がこっちに飛んできたとこなんて、マジでヤバかったわ。ヒ〜〜ってなった」

しろちゃんは、楽しそうに笑った。

私も、笑ってた。

普段、学校で男子と話すことなんて、ほとんどないし、こうして しろちゃんと話をしていることが不思議な感じ。

なんの違和感もなく、普通に話ができるなんて。


「美月、ケーキ好き?」

「うん、好きだよ」

「明日は、クリスマスイブだし、どうせ家でもケーキ食べるけど、美月と食べたいから、どっかでケーキ食べてかない?」

「あ、いいね!じゃ、私のオススメの店に行ってもいい?ケーキ屋さんなんだけど、イートインスペースがあってね~!そこのケーキがイチオシ」

しろちゃんとは、緊張しないで話せる。

初カレが、しろちゃんで良かった。

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