第3話〈つきあってる実感もなかった〉

 私は、好きな人もいなかったし、断るのもなんだから、白山君と付き合うことにした。


しらやまじゅんや君


【しらやま】だけど、クラスメイトはみんな

【しろちゃん】って呼んでいた。

私も、喋ったことはなかったけど、みんなと一緒で【しろちゃん】と呼んでいた。

付き合うことになったけど、【じゅんや】なんて、突然 名前呼びできるもんじゃないし、私はそのまま【しろちゃん】と呼んでいた。


しろちゃんは、それまで私のことを【仲田】って呼んでいたけど、付き合うことになって、二人の時は【美月】って呼ぶようになった。

学校にいる時は、今まで通り【仲田】だったけど。

【美月】って呼ばれるだけで、ちょっと照れる。

私のことをそう呼ぶ男の人って、お父さんと親戚のおじちゃんくらい。

照れるけど、嬉しかった。



付き合うことになったけど、学校で言葉を交わすことはほとんどなかった。

朝、昇降口であったら、おはようって声をかけるくらい。

あとは、掃除の時間くらい。

放課後は、お互いに部活があったし。

しろちゃんは、バスケットボール部。

私は、バレーボール部。

うちの、中学は、体育館が1つしかなくて、バスケとバレーが交替制で使っていた。バスケ部が学校の体育館を使う日は、バレー部は、自転車で近くの市民体育館へ行く。

その逆で、バレー部が体育館を使う日は、バスケ部は市民体育館へ行く。

だから、完全にすれ違いで、部活終わりに一緒に帰るとかも出来なかった。

しろちゃんがバスケをしてるところを見れるのは、体育の授業くらいだ。

しろちゃんは、背も高いし、シュートをバンバン決める。

かっこよかった。


2人で一緒にいるってことがなかったから、誰も私達が付き合っているなんて知らなかっただろう。

別に隠して内緒にしてるってことでもなかっただろうけど、しろちゃんは男子の友達に私のことを言ってないみたいだった。

私も、部活の仲間にも、いつも一緒にいる えみちゃんにも話さなかった。

なんか、恥ずかしかったし、実際 付き合ってるって言う実感も余りなかった。





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