第11話「日本語パートナーズ」

 いつも水曜と土曜に更新していますが、期末試験作りが忙しくて昨日(7月9日)の更新はお休みさせていただきました。

 

 今日は日本語パートナーズについて書こうと思う。

 2014年から始まった日本語パートナーズという事業をご存知だろうか。国際交流基金(Japan Foundation 略称JF)が中心となって行われているアジア地域の中学・高校へ日本人を派遣して日本語や日本文化を広める、いわば『日本そのものの輸出』とも言うべき事業だ。

 ちょうど私もバンコクで働いていた時期なので話は聞いていた。それどころか、日本語教師志望の私の後輩が第一期生として採用されタイヘ来たのだ。懐かしい話だ。

 公式サイトで確認したら一期(2014年度)はインドネシア48人、タイ29人、フィリピン5人、ベトナム10人、マレーシア8人の計100人が派遣されたらしい。それから徐々に増えて2018年度は600人以上が派遣されているらしい。すごいな。

 

 私が当時勤めていたタイの大学の敷地内には日本の大学(我が母校、後の職場)のオフィスが入っている。そこで働いている方は学部の先輩という「世間は狭い」を体現したような環境だった。そこに我々の後輩がパートナーズ期待の一期生としてやってくるわけだ。パートナーズは国の事業なので大使公邸(要は大使の家)で歓迎会が行われ、先輩の計らいでなんと私も(一応ギリギリ)関係者として参加させてもらえた。驚いた。

 わたくし、実は在タイ日本大使公邸に入っているのだ。ちゃんと当時の大使である佐藤重和さんとも名刺交換している。あれ、私けっこう凄い経験してるな。

 

 更にパートナーズ終了時にも報告会兼お茶会が行われ、都合がつかない先輩の代理で私が一人で大使公邸にご挨拶に行ったりもした。母校の代表として。

 ちなみにその時、入口の守衛さんに名前を間違えられて大変だったのが印象に残っている。私の本名はかなり間違えられやすい。だからペンネームはカタカナにした。守衛さんにタイ語で

 

「すみません、福岡大学のンドーです」


 と挨拶したところ、襟についてる無線に向けて笑顔で


福島大学のンドーさん到着です!」


 と言っているのだ。大学名も名前も、もちろん仮。

 二つしかない情報の両方を間違えないでくれよ!慌てて訂正したらその守衛さんは笑顔で私を手招きして大使公邸へと入れてくれた。

 いやいやいやいや、ダメだろ!警戒しなさいよ!入った瞬間、警備員出てきたら洒落にならんぞ!というか、大使の家なのにそんなにザルでいいのか!?在タイ日本大使ってタイにいる日本人の中で政治的な立場一番上の人だよ!?

 そんなことを思いながら建物に入って受付を済ませたら前回の歓迎会で挨拶をした方(肩書きは忘れた。偉い人なのは間違いないのだが)から「名前を間違えてしまいまして」と謝罪された。どうやら名簿には本当にエンドー(仮)として登録されていたらしい。なら仕方ない。いい思い出話になった。

 こんな経験もあって、私のペンネームは読み間違いの起きないものにしているのだ。


 当時のパートナーズそのものはまだ1回目ということもありトラブル多発で大変だったらしいが、今も毎年募集が行われている(2020年以外)。

 数年後タイに派遣された中には別の後輩もいて、私が最初に働いていたU県にある高校に派遣されたそうだ。私の最初の教え子(第9話にチラッと名前が出たGさん)がそこで日本語教師として働いているので、私の教え子と後輩が一緒に働くという状況になったらしい。こんなに嬉しいことはそうそうないだろう。


 当時、日本では来たる東京オリンピックのためにさまざまな点で訪日外国人を増やそうと、日本の注目度を高めようとしていた。日本語パートナーズもその一環だったのだろう。

 だが、これにより日本語教育に興味を抱いた人や日本に興味を持った人を知っている。日本語パートナーズという事業を主宰している国際交流基金に感謝だ。

 そして何より日本語パートナーズを推進した安倍晋三首相(当時)にも日本語教師として感謝している。あの事件以降、次の更新はパートナーズのことを書こうと決めていた。

 

 安倍元首相、ありがとうございました。

 そしてお疲れ様でした。

 どうか安らかにお眠りください。



 

 

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