レイプされたの!


「あ、明彦!」


 病院に行き、真衣の病室にいくとそこにはベッドに横たわっている真衣の姿があった。顔の半分、そして両手には包帯が巻かれ、よほど痛々しい傷を負ったのだと一目でわかる。


「……随分とひどい怪我を負ったらしいね」


「そ、そうなの……もう、手もろくに動かせないし、片目も……。で、でもこうして明彦と話ができるから私は元気だよ!」


 満身創痍の身体で笑顔を作るその姿は、きっといろんな人を感動させたんだろう。もともと愛嬌のある真衣のことだ、きっと病院の中でも人気者に違いない。


 でも、今の俺にはその笑顔が全く心に響かなかった。


「それでさ明彦、文化祭はどうだった——」


「事件の日、何してたの?」


「え?」


「夏樹と二人きりでいたんだろ? 誕生日のあの日、夏樹と何してたの?」


 延々と話を聞き続けることが我慢できなかった俺は、遠回しにあの時のことを聞く。真衣がどんな風に言い訳をするのか、少し気になったから。


「え、あ、そ、その……べ、別に、たまたま会っただけだよ」


「そうなの? 警察の人から聞いたら、二人は家の裏口から出たところを襲われたって聞いたけど?」


 そんな話本当は聞いてないけど。でも、あの時二人が何をしていたのか知っている俺は、真衣をあえて困らせるためにそう言う。


「あ……そ、それは……」


 すると真衣は露骨に言葉を詰まらせる。そりゃそうだ、あんなことしてて正直に答えるわけがない。いや、いっそ言ってくれたら俺は真衣を少しは許せるのかもしれない。もう恋愛感情を抱くことはないだろうけど。


「夏樹はまだ目を覚ましてないからさ、真衣からしか聞けないんだ。何、してたの?」


「う、あ……」


 下手な嘘すらつけないのか、真衣は答えることなくひたすらおどおどし続ける。きっと、俺が来たらいっぱい慰めてもらえるとか思っていたんだろう。優しい彼氏なら自分にとって都合のいい言葉を言ってくれると信じていたんだろう。


 でも残念。もう、そんな彼氏はいない。


「学校では真衣と夏樹が浮気したんじゃないかって噂になってるんだよ。俺、そんなこと信じたくないなー」


「う、浮気なんてしてるわけないじゃん! そんな嘘っぱちな情報じゃなくて、私を信じて明彦!」


 やっぱり真衣は隠すんだ。自分がどうしてこんなことになったのか、よくわかってないんだろうな。花蓮、相当うまくやったんだ。


「もちろん、信じたいさ。でも、あの日に真衣と夏樹が何をしていたのか教えてもらえないと、さすがの俺も……」


 自分でもびっくりするくらい、スラスラと思ってもいない言葉が出てくる。真衣への怒りが糧になっているのかな? ははっ、あたふたしてる真衣めちゃくちゃ面白い。


「……わかった、言うよ」


「え?」


 真衣は何かを決断したのか、俺に近くに寄れと目配せする。まさか、本当に浮気をしていたことを言うのか? もちろん、あんなこと許すつもりは一切ないけど、その勇気には感心してしまうかもしれない。さて、真衣はなんて言うのかな?


「……わ、私ね……な、夏樹に……れ、レイプされてたの?」


「……は?」


 思わず声が出てしまう。レイプ? 気持ちいいって言いながら喘いでいたアレが?


「む、無理やり私の家に入ってきて……されちゃったの。それで、続きをしようと私をホテルに連れて行こうとしてた時に……刺されて」


「……」


「……すごく、辛かったの。明彦にあげたかった純潔も、無理やり奪われて……散々痛い目に合わされて……ううっ」


 虚言を吐きながら真衣は胡散臭い涙を流す。このエピソードだけを聞けば、俺はきっと真衣を励ましていたのかもしれない。でも、俺は二人がセックスしているところを見ているわけで。本当に、全てが薄っぺらい。


「だ、だからね明彦。わ、私のこと支えてほ——ど、どこ行くの!?」


「うっせぇ、ビッチ野郎」


「え!?」


 もうこれ以上真衣と何も話したくなかった俺は、捨て台詞を吐いて一方的に病室を出て行った。多分、俺があの光景を見ていたと言っても真衣は嘘をつき続けるだろう。きっと、謝ることなんてしない。


 疲れた。やっぱり会うだけ無駄だったな。でも、もう絶対に会わないって決められたのだから、それでよしとしよう。


 そうして俺は病院を後にして、帰路に着いた。


 実は花蓮が病院にいて、聞き耳を立てていたことを知らずに。


――――――――――

読んでいただきありがとうございます!


たくさんの反応いただきとっても嬉しいです! 最近伸びが悪くてなかなかメンタルに来てるので、★×3やレビュー、フォローお願いします!お願いします!お願いします!(切実)

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