死なない程度に苦しめます


「な、なに……ビッチ野郎って? 明彦がそんなこと言うなんて……ま、まさか!」


 明彦が病室から出て行った後、真衣は言われた言葉を振り返って自身がしたことが彼にバレているのではないかと察する。優しい明彦が吐き捨てるようにビッチと言ったのは、それ以外考えられない。


「で、でもなんでバレたの……す、スマホとか見られてたの? いや、でもちゃんと明彦には見られないようにしてたし……。な、なら……や、やっぱりあいつが!」


 どうしてバレたのか真衣は考えてみると、一人の存在が浮かび上がる。夏樹と二人きりで歩いているところを見られ、自分や夏樹にあんなことをして、そして……ずっと、自分に対して憎しみの視線を送り続けていた、彼女が。


「……あんな脅しに屈してたまるもんか。言ってやる、このままされっぱなしでいたら明彦まで——」


「ご無沙汰してます、日高先輩」


「!?」


 扉を開ける音すら聞こえずに、いつの間にか病室にいて欲しくない存在が現れた。一生物の傷を負わせた張本人、福原花蓮が。


「な、なんで……」


「さぁ、どうしてでしょう。それにしても日高先輩、本当に反省しない人ですね。自分の非を一切認めずに、ひたすら保身に走り続ける。ほんと、レイプされたとかよく言えますね」


「っ……! あ、あんたが明彦に私の浮気をバラしたんでしょ! そんなに私のことが憎い!? 私が明彦と幸せになっちゃ、ダメだっての!?」


「は?」


「!?」


 花蓮はじわじわと彼女が死なずに苦しむよう加減しながら、真衣の首を掴む。


「確かに、私はあなたのことがずっと憎かったです。大好きな先輩の愛情をいっぱい受けて、先輩と幸せそうに過ごしているその姿に嫉妬し続けていましたから」


「あ……あがっ……ううっ……」


「でも、先輩が幸せであれば私はそれでよかったんです。自分に振り向いてくれなくても、先輩の幸せが一番でしたから。でも、あなたはそれを裏切ったじゃないですか」


「ぐっ……あっ……は、離して……」


「だから、当然の報いですよ。いや、もっと受けるべきですね。私はあなたを死なない程度に延々と苦しめないといけない、義務があるんですから」


「がっ……や、やめ……ぐっ」


「ああそうそう。先輩、今はもう彼女がいるんです。本当に幸せそうなんですよ、激しいキスもしたようですし、これからきっとそれ以上のこともするでしょう」


「あがっ……ま、まさかあ、あんた……ひ、人の彼氏を取ったの……」


「あなたが言えることじゃないですよ。簡単に他の男に股を開くような、あなたがね。ま、そういうことですので、もう先輩が日高先輩に好意を寄せることはもうありません。ご愁傷様です」


「ふ、ふざけん……な……」


 首を絞められつつも、なんとか抵抗しようともがく真衣だったが、なすすべなくひたすらやられ続ける。そして、もう優しい彼氏が他の女の元に行ってしまった事実にも絶望してしまう。


「ある意味感謝はしています。あなたがクズでなければ、私は先輩にとって良き後輩でしかいられなかったでしょうから。なので、首絞めはこれくらいにしましょう」


 真衣の首から花蓮の手が離れ、ようやく呼吸ができるようになった真衣は目一杯息を吸って呼吸を整える。


「あ、あんたね……ぜ、絶対——」


「犯人だって言ったら殺しますよ? あなたの浮気相手の三宅先輩のあれを切り落とした時に、ちゃんとそう言ったじゃないですか? もしかして、日高先輩も身体で学びたいタイプですか?」


「そ、そんな脅しにはもう——っっ!?」


 抵抗しようとしたのもつかの間。花蓮は真衣の指をポキっと一本折る。


「ああ、まだ指の痛覚はあるんですね。そうだ、犯人だって絶対言わないと誓うまで指の骨、折り続けましょう。ふふっ、どこまで耐えられますかね?」


「い、いや……」


「過去の自分を恨むことですね。先輩に誠実であれば、こんなことにならなかったんですから。ああ、人を呼んだって無駄ですから。もうここには、誰も来ません」


「な、なん……あああああああああああ!」


「さぁ、どうしてでしょうね。きっと、神様が天罰を下すために環境を整えてくれたんでしょう」


「そ、そんな馬鹿なこ……い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」


「さて、どこまで耐えられるのか見ものですね」


 薄ら笑いを浮かべながら、花蓮は醜く痛がる真衣に容赦無く、手をかけ続ける。どれだけ助けを呼んでも誰もこない絶望、ひたすら指を折られ続ける苦痛、そして、彼氏を取られてしまった現実が真衣の精神をただただ壊していく。


「……も、もう……や、やめて……な、何も……い、言わない……から」


 そして、残り2本になったところで完全に心が折れてしまい、真衣は虚ろな目をしながら花蓮に懇願する。


「そうですか。では、今日はこれで」


 そうして花蓮は足音一つ立てずに、いつの間にか病室から姿を消していた。


――――――――――

読んでいただきありがとうございます!


たくさんの反応いただきとっても嬉しいです! 最近伸びが悪くてなかなかメンタルに来てるので、★×3やレビュー、フォローお願いします!お願いします!お願いします!(切実)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る