6月 1日  お題:悪堕ち・『触るな!』☆

「ここ、は……? ぐ……動けない!?」

 黒い衣装に身を包んだ少女は、マジカルな見た目のかわいらしいリボンでベッドに拘束された状態で目を覚ました。

 

「あ、おはよう。やっと起きたね」

 彼女に声をかけたのは、傍らの椅子に座り本を読んでいた、もう一人の少女。

「あ、お前っ! ボクを……どうするつもりだ?」

 少女の声に、全てを思い出した彼女は、自分を気絶させ、そして拘束した張本人である少女を睨みつけた。

「決まっているでしょう? 私のことを、思い出してもらうの。戦いながら呼びかけたって、貴女、ぜんぜん私のこと思い出してくれないんだもん。だからこうして……身体の方から、思い出してもらおうと思って」

 言いながら、彼女に馬乗りとなって顔を近づけた少女は、左手を下へと伸ばし、彼女の下腹部にそっと触れた。

「ひぅっ!? な、なに、をぉっ!?」

 ただそれだけで、彼女はゾクゾクとした甘い痺れに襲われ、全身が火照り始める。

「新鮮な反応ね。ふふっ、ただ撫でただけよ。こうやって、ね」

 彼女の反応に満足したのか、少女は嗜虐的な笑みを浮かべると、彼女の太股に触れ、それから鼠径部へと向かって指を走らせた。

「ひやっ……っ!? あ…… さっ、さわ……るなぁ……っ」

「やっぱり。頭で忘れてしまっていても、貴女の身体は、しっかりと私のことを覚えていてくれてる」

「はぁ……っ、それ……は、どう……いう……っ!?」

 たった二度、触れられただけで彼女は発情状態へと入ってしまい、その息は熱く荒く、その顔は赤く紅潮しきっていた。

「分からない? これは、私たちがこれまで育んできた愛の証。私も貴女も、お互いこうして触れるだけでどんどん気持ちよくなって、お互いの事しか、考えられなくなってしまうの。どう? 身体の全てで愛し合える関係、とっても素敵だと思わない?」

 少女が耳元で囁くと、それすらも彼女には快楽として伝わり、性感がより一層高められていく。

「ボクっ…… へんに、なるっ…… やめ……ろ…… あり、す……」

 不意に彼女の口をついて出た名前に、アリスと呼ばれた少女は一瞬驚きの表情を見せ、それから涙で目を潤ませつつ、笑顔を見せた。

「私の名前……やっと、呼んでくれたね…… やっぱり、間違ってなかった」

 そして彼女も、アリスという名前を口にした瞬間から、目の前の少女への愛しさが溢れて止まらず、それなのになのも分からない哀しみに涙を流す。

「もっともっと、私のことしか考えられなくしてあげる…… そしてもっともっと……思い出させてあげる」

 アリスの瞳から涙が零れ落ち、彼女の頬で、ふたりの涙が混じり合った。


 

 それから、全てを思い出すまでの三日間、彼女はアリスから愛され続け……

 そして、全てを思い出してからの四日間、彼女とアリスは離れ離れとなっていた時間を埋めるように、より深く、より濃密に、愛し合い続けたのであった……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る