ブラジル怪異集

第45話 【悪夢を見せる妖怪】ピザデイラ(A Pisadeira)

　ピザデイラはポルトガルからやって来て、サンパウロ州やミナス・ジェライス州にたどり着いた移民（いみん）妖怪であるという。ペザデイラ (Pesadeira) ともいう。この妖怪は、人に悪夢を見せる女の妖怪とされている。

　ピザデイラの髪は長くモジャモジャしている。顔は皺（しわ）だらけで、鉤鼻（かぎばな）で、しゃくれ顎（あご）。目は赤く光っており、歯は緑色をしている。そして、体はひどい猫背である。指と爪はとても長いが、足はとても短い。こんな容姿で、いやらしい笑い声をあげるというから、不気味である。

　ピザデイラは、屋根の上に隠れて夜が来るのを待ち、人々が眠った頃を見計らって、そっと天井から降りてくる。そして、ぐっすりと眠っている人の胸の上に座り、安らかな呼吸の邪魔をする。なぜだか理由は分からないが、特に満腹になって眠った人を襲うという。人が悪夢でうなされ、苦しくなるのは、この妖怪の仕業であると考えられている。彼女に襲われ、呼吸困難で窒息死する者もいるそうだ。また彼女は、息苦しくさせるだけでなく、時には長い爪で人を引っかくこともあるという。