第5話
「蒼くんー。行っちゃやだぁ」
「蒼くん!!」
今日は僕の退院の日なんだけれど、病院の前に看護士さん、医師、関わった人すべてが病院の前で並んでいて、すごい数になっている。
「まだ、定期的にくるので泣かないでください」
「じゃあ、抱きしめて?」
「ずるい、私も」
「私も!」
そして、また列ができて一人一人抱きしめてくる。
「じゃあ、皆さん、またね?」
「うん、また来てね。絶対だよ!」
「じゃあ、早く乗って」
そう言って若干拗ねたように促す母さん。
「じゃあ、いこっか」
「うん、私の早く帰ろ」
車に乗って、十数分程。
「ここが私達の家だよ」
「え、でっか」
見ると、すごい敷地が広い家だった。
「母さんって実はすごい人?」
「うんって言いたいけれど、蒼ちゃんがいるからかな」
どうやら、男性がいる家庭は警備のために厳重にされているようだ。
「ただいまー」
「おかえり、蒼ちゃん」
「梨美はまだ学校?」
「うん、そうだよ。今日、蒼ちゃんが帰ってくるから早めに帰るって言ってたからもうすぐ...........」
「ただいまー」
丁度その時、玄関を開ける音がする。
「お、お兄ちゃん。お帰り」
「ただいま、梨美」
「え!?いま、名前呼んでくれた?」
「え、名前読んだだけだよ?」
「おにいちゃぁーん。おにいちゃんが、なまえよんでくれたよぉ」
ほんとに、前の僕はどれだけ家族に冷たかったんだろう。
若干の怒りが湧いてくる。
「これからはずっと呼ぶし、梨美と向き合っていくから」
「お兄ちゃん!」
僕は、そっと梨美の事を抱きしめ、頭をなでる。
梨美も抱きしめ返してきて、心がポカポカした。
「お兄ちゃん、いい匂いして私くらくらしてきちゃった。は、運んでくれる?」
「いいよ」
「きゃ」
梨美をお姫様抱っこして、リビングまで運ぶ。
「...........蒼ちゃん、私の事忘れてないよね?」
そう言って、頬を膨らませる母さん。
「ごめんね、母さんのこと、忘れてないから」
頭を撫でると、機嫌がよくなり、もっと頭を撫でて欲しいのか甘えてくる。
「お兄ちゃん、わたしも!」
「はいはい」
梨美が甘えるようにして僕の肩に顎をのせ、ぐりぐりとしてくる。
二人が満足いくまで撫でること数分。
僕のお腹の音が鳴って、頭なでなでタイムは時間を迎える。
「ご飯にしよっか。僕が作るよ」
「え!?お兄ちゃんご飯作れたの!?」
「え、あーうん」
こっちの世界の僕は料理作れないのか。
まぁ、僕も大学生で一人暮らししてからやるようになったから人の事いえないけれど。
「じゃあ、待っててね。すぐに作っちゃうから」
「うん、楽しみにしてるね」
簡単なものささっと作ってだすか。
冷蔵庫を見ると、卵にベーコンにチーズにいろいろと入っていた。
...........カルボナーラでいっか。
そうと決まれば後は作るだけなので早い。
パスタをゆで、湯切りし、炒めておいたベーコンとニンニクとオリーブオイルを混ぜ、そして卵とチーズを合わせればあら不思議、すぐに美味しいカルボナーラの出来上がり。
「ほ、本当に料理作れるんだ」
「簡単なものだけだけれどね」
「...........私より料理が上手そう」
「そんなことないよ、さ、食べよ?」
「「いただきまーす」」
二人は興味深々の様子で食べ始める。
「お、美味しい!!お兄ちゃん、美味しすぎるよ」
「蒼ちゃんがこんなに美味しいものを作れるなんてすごいわ!」
「あ、ありがとね」
二人は大絶賛のようだ。
よかった。
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