第3話 母さん

「蒼君しゅきぃ、だいしゅき。蒼君もお母さんのことしゅき?」

「う、うん。好きだよ」


 蹴破りそうな勢いで入ってきたのはなんとお母さんだった。


 ものすごい美人で、スタイルも良いけれど..............すっっっごい過保護。


 ことをさかのぼり事、数十分前。


「蒼ちゃん、大丈夫?どこも痛いところない?」

「うん、大丈夫だけれど..............あなたは、誰ですか?」

「え!?ほ、本当に、私の事がわからない?」


 ..............僕の知り合いにこんな美人な人はいなかったはずだ。


「私はね..............蒼ちゃんのお母さんなの」

「お母さん!?美人過ぎるんだけれど」

「そ、蒼ちゃん!?び、美人って、今そういった?」

「え、あ、うん」


 元居た世界の母さんは、普通の顔だったんだけれど。..............まぁ、僕の顔が異常なほどにかっこいいから説明はつくけれどさ。


「蒼ちゃんが美人って言ってくれたんだけれど!嬉しすぎるよぉ」


 僕のお母さん?がくねくねして、表情が恍惚としてやばい。


「お母さん、ごめんね。心配かけて」

「お、お母さん!?いま、お母さんっていった!?もう一回、言って」

「いいけれど。..............お母さん」


 僕がそういうと、胸を打たれたような仕草をしてない。


「蒼ちゃーん。しゅきぃー」


 そう言って僕の頭を胸のほうへ寄せて、抱きしめる。


 そして、さっきの場面まで戻るということだ。


「うぅー、ずるい。家族だからって」

「我慢しなさい、早苗」

「そういう先生だって、ものすっごい苦い顔してるけれど」

「しょうがないじゃない!ずるいもの!」

「蒼ちゃんは渡しませーん」

「くぅぅ」

 

 美人が、僕を求めて争いあっているというこの謎の状況に困惑を隠せないけれど、嬉しい。


「僕って、何日くらい入院していればいいんですか?」

「..............ずっといて?」

「先生?蒼ちゃんが可愛すぎるのは解るけれど、職務怠慢ですよ?」

「うぅ、長くても二週間くらいよ。短くて数日で帰れるわ。診察した感じどこにも異常はないもの」

「うふふ、早くお家に帰りましょうね」


 そう妖艶にほほ笑む母さんに僕は思わずドキッとしてしまう。


「でも、通院も必要だから、一週間に一回は来てね」

「はい、わかりました」


 美人の泣き顔に弱いのは全男性同じことだと思う。


 

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