第21話  古い記憶を辿ってみると

1番古い記憶について考えていた。自分の中にある物でどれが1番古い記憶だろう。色々と頭の中を検索してみる。幼稚園ごろの記憶だろうか。断片的な物ばかりだけど、書き出してみよう。


祖母の家の縁側にある障子。障子の半分くらいの高さのところに取手があってそれに手を引っ掛けてグッと持ち上げると障子が少し引き上がって光が入ってくる物だった。電気の消えた薄暗い部屋で少しだけその障子の窓のような所が開いていて、薄陽が差している光景。何となくぼんやりとその光を見ていた記憶。


感情の記憶。幼稚園の園庭で、夏、日光浴をするのに上半身裸でバナナのアイスキャンディーを食べた。「まずいなぁ」と思いながら嫌々食べた記憶。みんなどんどん食べ終わって、私だけ最後まで時間がかかりながらちょびちょびと齧って食べている。「まずいなぁ」とずっと心で思いながら。近くに女の先生も立っていて、色々と園児の世話をしている。男子も女子もみんな上半身裸ん坊。女児に上半身裸とは今の時代ではあり得ない光景だけど、これものどかな昭和の風景。


先日実家に4年ぶりに帰った。川を挟んだ向こう岸にあるマンション群が一つ建て替わっていたが、他の3棟は昔のままだった。そこの一つのマンションに幼稚園の時に友達が住んでいて、遊びに行った日の記憶。

その友達ともう2人程と外でかくれんぼをしようと言うことになってマンションの外に出た。ひとしきりかくれんぼをして、飽きたので友達の家にもどることになった。何故だか覚えていないが、出遅れた私は少ししてから1人でその友達の家に行った。ドアを開けて「ただいま」と言いながら入っていくと、全く知らないおじさんとおばさんがタオルケットを掛けて昼寝していた。目が合った。ひどく驚いて逃げ帰り、ドアの外に飛び出した。ドキドキしながら、同じようなドアが並ぶ廊下をウロウロと彷徨う。「ここだっけ?」と思いながらドアを開けたら今度は友達と友達のお母さんと別の友達2人がいて、かくれんぼ前の状態と同じだった。どこだか分からないけど、間違えて知らない家に入ってしまったようだ。きっとそのおじさんとおばさんも驚いた事だろう。知らない幼稚園児が「ただいま〜」と言って入ってきたのだから。


不思議な記憶。それは、小学校の帰り道。3年生か4年生くらいだったと思う。1人で歩いていると、路地裏で犬が車に轢かれて死んでいた。「ああっ!可哀想」と思いながらもう少し歩いていくと今度は猫が轢かれて死んでいた。その後、「まさかネズミは無いよねぇ」と思いながら歩いていくと、まさかのネズミが轢かれて死んでいた。一直線。猫がネズミを追いかけて、犬が猫を追いかけていた時に起きたのかなぁなどと考えていた。「こんな事ってある?」と思って未だに凄く印象に残っている。何度かこの話を友達や同僚などにした事があるが、いつも全く信じてもらえたためしがない。でも、信じてもらえなくても本当にあったことなのでここに記しておく。

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