第7話 アフタートーク

「でんが、本日はむずこのキルがだいへんおぜわになりまじた~。」


筋肉アホに一緒に酒でもどうですかと言われ、上級冒険者も利用するという高めの酒場に連れて来られたと思ったら・・・。


王国騎士団長のベリアルが号泣していました。涙と鼻水で顔中ぐしゃぐしゃです。

クマゴロウが泣いてるわ、滑稽だわ。


「クマゴロウはどうして号泣しているんだ、嬉しいのか?」

「ばぎ、べぼずべだじだっご~。」


何言ってるのかサッパリ分かんないわよ、でもこれは笑ってはいけない何かね。筋肉アホも事情説明しなさいよ。


ズビシ。


なんで親子でサムズアップしてんのよ、ちゃんとコミュニケーションとれや。

「クマゴロウ落ち着け、ぼくも付き合うから火酒でも飲もう。」


   ♦


無言のまま火酒を7杯ほど飲んだらようやく話が弾みだしたわ。どんだけ飲んでんのよ。私は酒は弱いので、途中からソーセージをつまみにワインをちびちびよ。


「殿下、大変感謝しています。愚息のギルは今まで酒も煙草も女にも興味のない筋肉アホでした。それが今日、朝の鍛錬の後に殿下のお供で娼館に行きたいから金をくれと言ってきたのです。」

「なるほど。」

「この筋肉アホもようやく1人前の男になったことが私は嬉しいのです。この愚息はきちんとヤレたでしょうか?」


「大丈夫だと思うぞ、猫獣人のタマを4時間、自分から指名してたぞ。心配なら自分で聞いてみろ。」

「なんと、いきなりタマ、けしからん。わしも相手してもらったことないのに。」

「筋肉アホ、クマゴロウに感想を述べてみよ。」

「にゃ~。」


それじゃだめでしょう。今回のスポンサーよ、報告の義務があると思うわよ。火酒を飲ませて自供させるわ、私も気になるし。

「ほら、お前も飲め。」


グビッ。

グビッ。

グビッ。


「めっちゃよかったっス、タマちゃん最高っス、猫獣人激しいっス。オレかな~り鍛えている自信あったっスけど、押さえつけられて動けないままヤラレたっス。でも5回目にやっと後ろから押さえつけてニャーニャー言わせたっス。」


「貴様~、わしと勝負だ。」


謎展開、クマゴロウと筋肉アホが掴み合いのケンカを始めたわよ。男って感想交流会でこんなことすんの?あっ、ようやく収まったようね。しかし、筋肉アホは酒を飲ますとよくしゃべるようになるわね。


「フュー様はどうでしたか?」

「ぼくか?ぼくの相手はローズだったな。ローズはさすがナンバーワンだけあってテクニシャンだな。ぼくを満足させるとは大したもんだ。」

「殿下の相手は、ロロ・・ローズですか。ローズは自分が気に入った男しか相手にしない、騎士団では羨望の的ですよ。」

「そうなのか、ぼくはローズに褒められたぞ。今度紹介しようか?」


何でこのクマゴロウは口を大きく開けて驚いてるんだ。感想交流会はこれぐらいでいいわよね。本題を話そうかしら。


「唐突だが、クマゴロウへぼくから2つ頼みごとがある。聞いてくれるか?」

「殿下の望みならば何なりと。」


「まず1つ目だ。明日の午後からでよいから騎士団の訓練にぼくも参加させてもらいたい。ここらで心と体を一から鍛え直そうと思ってな。」

「特別扱いしませんよ、それでいいなら。」


「望むところだ、次に2つ目だ。今月、王国の政策決定のための御前会議が開かれる。そこでぼくは王都東地区の再開発を提案しようと思う。」

「理由をお聞かせしてもらっても。」


「今回の婚約破棄でぼくは信頼を失った。今回の事件はもう広く民にも噂として伝っているはずだ。そこで、娼館や冒険者組合などが立ち並ぶ東地区を再開発し、信頼を回復したいのだ。」

「分かりました、援護はお任せください。殿下、変わられましたな。」


あのナヨチンバカは今まで家臣にどんな目で見られてたのよ。でもこれは私にとってチャンスよ。今まで女は政策決定には全く参加できなかった。私の理想を実現するためには何でも利用すると決めたのよ。


でも情報取集と資料作成の時間がないわね。そうだ、あいつを抱き込もう。


「影。」

「何か御用で。」


「お前に王都東地区の情報収集を頼みたい。民の噂話、困りごと、事件など何でもよい、情報を集めてぼくに報告しろ。今日からお前は陛下ではなく、ぼくに仕えよ。」

「見返りを下さいませ。」

「許す、申せ。」

「王太子殿下とギル様の遊び仲間にそれがしも加えて下さいませ。」

「さっきの娼館に気になる女でもいたのか?」

「はい。」


この影大丈夫か?

まあ、次期国王と次期騎士団長と遊び仲間ともなればこいつの将来も安泰ってわけよね。ここはお互い持ちつつ持たれつ、この影にも部下がいるだろうし、利用価値は高いわね。


「まあよかろう。ぼくと筋肉アホと影、潰れる時は3人一緒だ。忠誠を誓えとは言わん、お互いを利用し合うのだ。クマゴロウもよいな。」


「「「はい。」」」


翌朝、日課の早朝ランニングをしていた。


ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ。


騎士団の若手団員が大勢現れた。

大方、私にランニングで勝ったら娼館に連れて行ってもらえると思ったのよね。

男って、ほんとバカよね~。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る