第23話 オタサーの姫殺人事件

 事件があったのは、都内の某有名大学の校舎の一室だった。

 部屋の中央に若い女が裸で倒れて死んでいる。


「殺されていたのはこの大学に通う学生、於保おほアリサ。首を絞められての扼殺やくさつです。アニメ研究サークルに在籍している、所謂いわゆる、オタサーの姫だったようです」

 朝立あさだち巡査が上司の工口こうぐち警部に報告する。


「……ふーむ、こりゃサークル内での怨恨の線が濃厚だな」


「ええ、於保アリサには実は彼氏がいて、於保をアニメ研究サークルに入るように仕向けたのもこの彼氏の仕業だったようです。非モテオタクを揶揄ってやることが目的だったのでしょう」


「それで恨みをかったわけだな。まだ若いのに勿体ない」


「ガイシャは刃物で服を切り裂かれ、全裸にされていました。そして体中にマジックで卑猥な言葉が書かれていました」


「……よし、では容疑者を全員ここに集めろ。そしてあとのことはエリカちゃんに全て任せようじゃないか」


「…………」


     👸 👸 👸

 

 肉倉ししくらエリカは大学の講堂に集められた容疑者たち三人を値踏みするように睨んでいる。


「じゃあこの画用紙におま〇この絵を描いてくれない? それもできるだけ詳しく」


「……なるほど、容疑者はオタクサークルにいる童貞。だが犯人だけは服を切り裂いたときにガイシャの裸を見ている。つまり正しい絵を描いたら犯人、間違った絵を描いたらバキバキの童貞確定の二者択一というわけか!!」

 工口が鼻息を荒くして膝を叩く。


「エロ警部うるさい」


「くだらん」

 三人の容疑者のうちの一人、足袋抜たぶぬき諒一りょういちはスラスラと画用紙に女性器を描く。


「絵が描けたから何だというのだ、馬鹿馬鹿しい。こんなもの、何の証拠にもならない。僕は人殺しでも童貞でも、どちらでもないぞ」


「犯人、わかったんだけど」

 エリカはそう言ってニヤリと笑う。


「確かにおま〇こを描けたから犯人って推理は乱暴だね。けど、犯人はお前な」


「何だと糞ビッチ!!」

 足袋抜が興奮して机を叩く。


「まァ落ち着きなよ。於保アリサはクリトリスにピアスをしていた。そして童貞のアンタは絵を描くとき、うっかりそれまで描いてしまった」


「……なッ!?」


「童貞のアンタは初めておま〇こを見て、全てのおま〇こも同じくピアスが開いているものだと思ってしまった。では改めて質問だけど、どうして於保アリサのクリトリスにピアスが付いていることを知っているのか、お姉さんに説明してくれないかな? 童貞の坊や」


 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。

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