第21話 イースターエッグ殺人事件

 資産家の地井じい猿之助えんのすけが死んでいると110番通報があった。


 現場の地井邸へ急行した工口こうぐち警部と朝立あさだちは、寝室で全裸で倒れている小柄な老人の遺体を発見する。死因は心臓麻痺。遺体の周辺には使用済みと思われる丸めたティッシュが散乱していた。

 ナイトテーブルにはイースターの飾りとして、カラフルな卵が飾られていた。


     🗿 🗿 🗿


「ご愁傷様です」

 工口は地井夫人、梨里杏りりあにお悔やみの言葉をかける。

 梨里杏は地井と40歳年の離れた後妻である。潤んだ瞳にぷるんとした唇。セーターの上からでもわかる豊満なバストと、ミニスカートから出たムチムチの太もも。


 工口は目のやり場に困りながらも、股間の疼きを抑えることができなかった。


「こりゃ腹上死で決まりだろうな」

 工口が朝立に耳打ちする。


「……ええ。あの奥さんなら年齢を省みず、ついハッスルしてしまう気持ちもわかります」


ったか?」


「は?」


「あの奥さんで勃ったかと訊いているんだ」


「……た、勃つわけないでしょう。不謹慎ですよ警部」


「嘘つけ。私ですらずっと半勃ちだったんだ。若いお前はフル勃起ぼっきしてたに決まっている!」


 工口が朝立の勃起を確認しようと股間に手を伸ばす。


「や、やめてくださいよ警部」


「……へー、警部ってそっちの気だったんだ」


 工口が視線を上げると、肉倉ししくらエリカがジト目で睨んでいた。


「ち、違うんだエリカちゃん! 誤解だ! 私は朝夕毎日エリカちゃんをおかずにしている。もはやおかずではなく主食だ!」


「犯人、わかったんだけど」


 工口のセクハラ発言を無視して、エリカは何時もの決めゼリフを言った。


「地井氏はスケベな体の奥さんにハッスルしすぎて腹上死したんじゃないのか?」


「その推理は大ハズレだよ警部。地井氏と梨里杏さんはセックスレスだからね」


「何だって!?」


「ナイトテーブルをよく見てよ。あれはイースターの飾り付けじゃなくて卵形TENGAテンガだよ」


 エリカの言うとおり、色とりどりの卵はよく見ると確かにTENGAである。


「地井氏はTENGAにハマりすぎて、女性との性行で射精することができなくなってしまったんだ。そのことに不満を感じたのか遺産目当てなのかは知らないけど、奥さんはAEDエーイーディーで心臓にショックを与えて地井氏を殺したんだよ」


「AEDは蘇生に使ったのではなく、兇器きょうきだったんですね」


「……確かにTENGAは手軽で滅茶気持ちいいからな。少子化問題も止むなし!」


 こうして事件は一件落着。今回は社会派であった。ふぅ。

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