第20話 痴漢冤罪殺人事件

「お前がやったんだろ!」

 工口こうぐち彰久あきひさが取調室のデスクを勢いよく叩き付ける。あまりにも強く叩きすぎた所為で、工口の掌はジンジンと痛んでいた。


「刑事さん、今まで黙っていたが実は俺にはアリバイがあるんだ」

 揉井もみい銀二ぎんじはそう言ってニヤリと笑う。


乙幡おっぱた伊助いすけが殺された時間、俺は山手線の電車内で痴漢をしていたんだよ」


     ✋ ✋ ✋


 工口と朝立あさだち元気げんきは揉井のアリバイを確認するために、痴漢被害者の女子高生宅へ来ていた。


「良く思い出してください。今朝、この男に電車内で体を触られましたか?」

 朝立が写真を見せながら尋ねる。


「確かに痴漢には遭いました。怖くて振り返れなかったので顔は見てませんが……」


 そこで工口は突然、土下座の態勢になる。


「では、今履いているパンツを少しの間貸して戴けないでしょうか?」


「は?」


「殺人事件の重要な証拠なんです。ご協力お願いします」

 続いて朝立ち玄関の前で土下座する。


 工口と朝立は女子高生・小尻おじりしおりから「変態」と16回罵倒された後、当日履いていたパンツを手に入れる。


 その後の科捜研の調査の結果、小尻のパンツには確かに揉井の指紋と汗が付着していることが判明。揉井のアリバイが成立した。


     ✋ ✋ ✋


「犯人、わかったんだけど」

 肉倉ししくらエリカは工口の話を聞いて、何時もの決めゼリフを吐いた。


「この事件の犯人は間違いなく揉井だよ」


「でも、奴が痴漢で捕まってしまうとアリバイが……」


「揉井は痴漢なんかしていない」


「だったらパンツに残っていた指紋はどうなる?」


「予め小尻しおりの家に空き巣に入って、箪笥タンスに入っていた全てのパンツに指紋を付けていたんだ。当日、小尻がどのパンツを履いても必ず自分の指紋が付いているようにね」


「……じゃあ実際に小尻の体を触ったのは?」


「殺人事件とは無関係の別人。そいつは指紋が付かないよう手袋をしていたか、手の甲で触ったんだろうね。小尻が痴漢によく遭っていることを揉井は知っていて、それを利用したんだ」


「とんだ変態野郎だな。許せん!」

 工口は鼻息を荒くして憤った。


 エリカの推理を聞いたエロ警部はすぐさま小尻宅へ飛び、今度は持っている全ての下着を調べたいと頼み込んだ。工口は「変態」と32回罵倒され、顔面を踏みつけられるというご褒美の後、何とか全てのパンツを手に入れる。


 科捜研の調査で、全てのパンツに揉井の指紋が付着していたことが判明。揉井のアリバイは崩れた。


 こうして事件は一件落着。今回も難事件であった。ふぅ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る