解決編

「何のことじゃ」



 ゴードンさん--いや、本名ユリシーズさんはボクの問いに惚けた。だからボクはマジックフォンマジホの画面を見せた。そこにはかつて宮廷彫刻家だったユリシーズさんの姿が映っていた。



「王宮のガーゴイルの像。アレ作ったのユリシーズさんですよね? ボク、これを見るまでずっと本物だと思ってました」



 ユリシーズさんはボクから顔を背けた。うん。本人だと認めたと思っておこう。



「さて、それでは謎解きといきますか」



 ボクは前髪を掻き上げた。



『おぉ! その仕草は、アーサー王子が正体を明かすときのもの。つまり、貴方が!』



 速報隊のお姉さんが更に場を盛り上げる。



「はい」ボクは変身を解いて本当の姿を現した。



「ボクがアーサーです」



 広間から歓声が湧き上がった。そんな中、ただ1人、怒りの声を上げる者がいた。



「貴様だったのかぁッ! どうやって結界の中で変身したァッ!」



 言わずと知れたエドガー隊長だ。



「結界の中ではボクでも無理です。だからお姉ちゃんエラリィに手伝って貰って部屋の外に出ました。彼女は認識阻害魔法の天才ですから」



 幼少期に暗殺者アサシンに憧れたが故に身につけた魔法だと聞いた。この前も鼻血を流しながら歩いていた。きっと隊長の入浴を覗いたor一緒に入ったのだろう。



「馬鹿な! あの聖女がお前なんかに?!」



 お姉ちゃん多分今ここにいるぞ。貴方の勇姿が御馳走な人だから。まあそれはいい。話を進めよう。



「まず、大賢者シンディを以ってしても石化が解けない理由。それは……」



 誰かの喉がごくりと鳴った。



「それが本物の石像だからです。製作者はゴードンことユリシーズさん。いやぁ実に精巧な彫刻ですね」



『では、ユリシーズ氏が犯人と?』と速報隊のお姉さん。



「と、言うより協力者、ですね。作った石像をカーティスさんの部屋とハリエットさんの部屋に運んだんです」



「え? カーティスさんの部屋には鍵がかかっていて開けられるのは奥様だけじゃ?」



 みんなの視線が奥様に集中する。



『おっとぉ! と言うことは犯人は奥様かぁッ?!』



「違う! ワタクシではありません!」



「その通り、奥様はその日ハリエットさんのスリープの魔法で眠らされていました。そうですね?」



 奥様はコクンと肯いた。



『では、ハリエットさんが鍵を盗んだのかぁッ?!』



「いえ、鍵を開けたのはカーティスさんです。ハリエットさんはカーティスさんの奥さんですから。そうですね? ウォーレンさん?」



 ウォーレンさんは観念したように項垂れた。



「ウォーレンさんはカーティスさんから奥様を取り戻したかった。だからカーティスさんの奥さんを見つけ、邸で雇った」



「な、何ですってぇ!」



 奥様が金切り声を上げた。構わず推理を続ける。



「ご主人、カーティスさんは石化解呪の魔法が使えたのでは?」



「ああ、お陰でポーズ変更が捗った……て、じゃあペガサスを盗んだのは?!」



「はい、カーティスさんとハリエットさんの2人です。ペガサスに乗ってここから逃げたんです。それを手引きしたのが……」



 ボクは犯人を指差した。



「ウォーレンさん。あなたです」



 ◇ ◇ ◇



「貴様は愛し合う2人を引き裂いたのかぁッ」



 エドガー隊長が奥様に一括した。それだけで奥様は失禁して気を失った。もうカーティスさんを連れ戻そうとはしないだろう。



 隊長はエラリィボクのお姉ちゃんの恩人だ。



 絶世の美姫と名高いお姉ちゃんを神獣が欲しがった。王国の平和と安全を引き換えに。



 それを「テメェなんざの力なんぞ要るかッ! ボケェッ!」と神獣を切り伏せたのがエドガー隊長だ。



 ボクは隊長にいくら感謝してもしきれない。だけど今は--。



「どこに逃げたッ! アホ王子!!」



 逃げの一手だ。



 ボクは怒られるのが苦手なのだ。


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探偵王子アーサー ◎◯ @niwakazuma

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