第4章

「『パルガレフ』には、何があるのですか?」


 その言葉に、ポンの顔は青ざめた。

 言葉にではない、発した声の主に、だ。


「ソ……ソーディニジョルム……」

「殺した相手に、へりくだる態度はできぬか」

「なぜ、生きている」


 街に降り立ってすぐ、ポンと六人の娘たちは一人のローブの男に呼び止められた。ローブの男はフードもすっぽりと被っており、警戒する娘たちに顔を見せるように言われた。

そして、顔を出すと――そこにいたのは魔王だった。


「お前のようなヒトを裏切ったものに、警戒もせず後ろを見せると思うか? キサマの魔法にかけられたのは、可愛そうな影武者だ。奴は可哀そうに例の火の魔法使いに焼かれたよ――そうなれば、恋しくなるのはあれだな……風の魔石か」

「!」


 ポンは、瞬時に橙色の魔石を取り出した。

 龍に変える魔法を使った後、あの場所から回収してきたものだ。

 魔石に自身の魔力を込める。

 が、発せられたのは土の魔法ではなかった。

 ポンを含めた七人全員が、一瞬にして小さな結晶の中に捕えられた。


「影武者を準備したのだぞ? 本物を落とすような失策を犯すわけがない」


 彼は、杖に嵌められた石を手に取る。

 小さな結晶の中に、六人の顔が浮かんでは消えた。


「石の中は、永遠の時を封じ込めた牢獄。足掻いても何も掴むことはできない。いかなる魔法も使うことはできない。年も取らぬ代わりに、ただただ空間を漂いつづけろ……六〇〇年前、お前たちの時代の人間もそうなっているよ。

 さて、後でポン――貴様だけは外に出してやろう。お前とはゆっくり話をしなければならんだろうからな」

 


 魔王は、再びフードを被り直す。

 自身の魔法で、空間に穴を作り、その暗闇へと消えて行った。

 顔はうっすらと微笑んでいるようだった。


             【終】

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