第4話 食事は官能的なのか no.3
──本能。
視線を逸らさなければヤられる。
楠が決断するまでの時間、僅か0.5秒。
決して遅くは無い。安全圏まで逃げ切ることができた、と確信。
──が、駄目。
眼球は本体の命令を無視し、茜の口元に釘付け。
劣情というなの鎖が思考と行動を縛り付ける。
「クク、ほら、横座れって」
「あ、あぁ……」
最早、傀儡同然。
茜が張り巡らせた糸に自ら絡み獲られていく。
楠は素直に横に座り凝視した。
不敵な笑み。そして、フランクフルトという名の矢を放つ。
「いただきます……んッ、く」
太く長い肉棒(比喩ではない)を、舌で迎えいれる。息を吐き出しながら誘惑の甘い声を上げ。
馬鹿っ、ありえない……舌で迎え入れるなんて……非常識っ……人間の食べ方じゃない……っ!!! 食べにくいだろっ……それじゃっ……フランクフルトっ!!!
「冷えて……ん、ぁッ、凄く硬くなっちゃってる……んっ、んッ♡」
噛み切るのに苦戦している茜。
口に入れては出し、唾液を絡ませていく。
苦しそうな声は楠の脳を侵蝕。
肉棒を自身の肉棒(比喩)へと脳内変換。
底無し沼に足を踏み入れた子鹿に逃げ道は無い。
噛み切れっ……容易いだろっ……そんな物……切れっ……切れ、切れ……っ!!
「んぁ、んっ……んくッ、ん……ぁッ♡」
茜、此処ぞとばかりに攻める、責める。
隠キャ童貞という希少な生物の心を弄ぶかのように、蛇の如く舌を蠢かせる。
正に、狩人──狩人ッ!
……と、俺の思考は完全に現実から離れていた。
達観的に事の状況を静観するしかできない程に。
くちゅ、くちゅ、と唾液が淫音を奏で夕暮れの屋上を官能的な雰囲気へ変えていく。
茜さんの視線が俺の下半身に向いた。
確認しているのだ、獲物の降伏を。
喉奥に肉棒を詰め込み、涙目になりながらも必死に咥える。
「ぁ、はぁ、はぁ……んっ、んぁ……く、ぅんッ!♡」
少しでも侵蝕タイプだと思った自分が馬鹿だった。
清純派のボディーブローを受け続け下がった腕の隙を突き、空いた顔面に右ストレートをぶちこまれた気分だ。
擬似フェラチオ、とでも言うのだろうか。
肉棒を美味しそうに頬張る姿に、俺の息子にも血が滾り始めていた。
余談だが、無理矢理肉棒を奥に突っ込む行為をイラマチオと言う。
イマラチオと勘違いしやすいので「ちんちん苛々イラマチオ」と覚えよう。
「んっ……あれ、楠ぃ〜少し膨らんできてるんじゃぁないかなぁ?」
「フランクフルトを食べている姿でどうして興奮しなくてはならない」
「んっ、んんッ!♡」
「──ッ!?」
「ほら、少し甘い声を出しただけで内股になってる。隠しても無駄だよん」
「く、くそッ……」
「さぁ、さぁさぁさぁ! 足を開いて見せろ、楠ィ!!」
フランクフルトを口に咥え、両腕を俺の下半身に近づける茜さん。
どうする、どうすればいい……初めての日のような「緊張による
視界に入る肉棒は、俺の肉棒とリンクしてしまっていた。
下半身にこもる力は止まってくれない──ならばッ!!
「食事中は……食事に集中しろ!!!」
「ん!?」
ちゅぽんと音を鳴らし、彼女の口からフランクフルトを引き抜くと俺はそれを食べてしまった。
こうすることで、彼女のいやらしさは解消され俺の勃起は治るといった算段だ。
……うん、美味しい。
冷たくて硬いっていってたけど、中々に温かいじゃないか。
「うんうん、ご馳走様。悪いな、茜さん、あまりに美味しそうだったから食べてしまった。また何か奢るから勘弁してくれ」
「あ……ぇ、ぁ……っと、う、ぅん……」
あれ? 何かリアクションが変だ。
もっと悔しがるかと思ったのに。
もしかして、乱暴に奪った事を怒ってる?
「茜さん、ごめん。勝手に取ったのは謝るからさ」
「ぉえ!? ぃ、いや……さ、流石の私も……ちょ、ちょっと恥ずかしいというか……」
「え、何が?」
「き、気が付いていない……の?」
「なんだよーハッキリ言えよ」
「……普通のキスなんか比じゃない、濃厚間接キスを今、したんだぞ」
「──ッ!!!!」
この温かさも、柔らかさも、味も……全ては彼女の唾液ッ!?
よ、よく考えれば当たり前の事だった。
純情青春ラブみたいな言い方で、濃厚間接キスなんて用語がでてくる彼女の語彙力に驚く暇も無く、俺は逃げ出していた。
「ぉわわわわわ!!!」
「あ、ちょ、逃げんなよ、楠!!」
呼び止められても止まらない。
階段を駆け下り、家にダッシュで帰り、部屋に籠り、あの味を思い出しながら3回抜いた。
今までの人生で一番いっぱい出た
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