After 10 years~Autumn

…今の季節は春。とは言えどここヒダンゲには春特有の暑さは無く涼しい風が吹く心地いい季節だった

桜もあり、ソメイヨシノが咲いて卒業生を見送っていた。そんな大学の一角で新たな卒業生が2人、ベンチに座っていた

しいな、マーガレット。2人はゲッカシティにある大学を卒業してここへいた。手に持ってる卒業証書を片手に座っていた

2人は中学校のころとは違う体格をしており、しいなは160センチ。マーガレットは170センチになっていた

しいなはまあまあ胸もあるがマーガレットはなぜか大きい胸になり自分自身女性っぽくはなりたくないなとは思っていたが、女性らしくなった

マーガレットは少々ジェンダーレスな部分があったがこの体格になってある程度諦めをついた

しいなもマーガレットも卒業祝いの着物を着て卒業式を出てその余韻を残すかのようにいた。しいなはマーガレットに話しかける

しいな「…良い卒業式だったわね」

そう言うとマーガレットは反応する

マーガレット「そうだな。本当に大学までいけて卒業できたんだって実感が湧くぜ」

しいなとマーガレット。中学校を卒業したあと2人は別々の高校へ行ってた。それぞれ3年経った後、大学へ行った

おまけに2人は再び大学で再会し学科は別だったが同じ大学にいたことがしいなとマーガレットは嬉しい気持ちだった

ゲッカシティにある大学にしいなは考古学を、マーガレットは天使のことを学んだ。それで4年間、単位を落とさず無事に卒業ができた

そして大学から大学院へと。もちろん真面目な2人は決して単位も落とさず無事に卒業できた

元々真面目な2人。授業だってほぼサボらずに学んでいた。ただそれだけだった

そんなことを思っていたらマーガレットが空を見るのを止めてしいなの顔を見る

マーガレット「なあしいな、お前卒業後はタツジさんがいる遺跡調査の会社に行くって?」

しいなは中学校の時に功績を残したという理由が大きくタツジに注目されていた

しいな「そうなのよ。4年の春あたりかな…タツジさんと牧さんから入社してくれってオファーが来てね。もちろん私、喜んで入社するわ」

マーガレットは思ったがやはりこのしいなという存在は遺跡関連で功績を残したことがすごいことなんだな、と

それはもちろんタツジも牧もこの人物をほしいと思うわけだ。改めてそう思った

しいな「でもマーガレットだって天使協会に入ってくれってラファエルさんとニケさんに直々に言われたんでしょ?」

おっと。マーガレットは思った

マーガレット「そうなんだよ。俺、本当は別の会社に行こうかなとは思ったんだが…天使協会からオファー来たからな。びっくりだよ」

マーガレットは元々アルエルの親戚。大天使の血を引いてるのだから天使協会に入るのは当たり前なことだったかもしれない

しいな「ほんと2人して他の人は数回以上も面接するような生活送ってるのに私達だけ楽に入社してるのは面白いわね!」

マーガレット「本当だよな!こればかりは面白い話だな!」

そう言うと2人は笑いあった。笑い合うとふと、思い出したことがしいなはあった

しいな「そう言えば…シャニオンちゃんとりなちゃん今何やってんだろうね?」

マーガレットが答える

マーガレット「シャニオン、あいつクリスタルウィンター大学だろ?りなは森の多い国、アーカルドにいるって話だし」

そうだった。シャニオンは一流大学に。ハーフエルフのりなはアーカルドに行ったとのことだ

シャニオンに最後に会ったのは高校3年の秋。そのときからシャニオンはクリスタルウィンター大学へ行こうと決心してたらしい…

仲良しの先輩とりなに別れを告げて、シャニオンはユキノウエと行ってしまった…

りなは高校卒業後、両親の仕事の関係でアーカルドへと行ってしまう。本当だったらこの国にいたかったらしいが

だが、連絡が遮断されてるわけでは無かった。4人は今でも会話アプリで話すぐらいには仲がいい

しいな「いつかまた…4人で仲良く遊べるといいわね」

マーガレット「ああ。まずは俺達が稼がないとな!」

しいな「そうね!転勤であちこち行って遺跡を見れるといいな!」

マーガレット「頑張れよしいな」

マーガレットはすっと手を出した。握手であった

しいな「うん!マーガレットもラファエルさんに困らす行動しないでね!」

しいなは握手を交わした。2人は立ち上がり、別々の道へ行った


しいなは遺跡調査研究の場所へと向かった。もう既に簡単な面接を受け入社するのは決定してるためほとんど顔パスであった

着物を着ながらタツジのいる場所へと行く。コンコン…ドアをノックして反応を待つ。ガチャ…

タツジが出てきた。おまけに牧もいた。2人に出会ってしいなは嬉しそうな表情をする

しいな「タツジさん!牧さん!私、卒業したよ!」

卒業の晴れ着を見て2人は嬉しそうな表情をする

タツジ「しいなちゃん。卒業おめでとう。君にはとても期待してるからね」

牧「卒業おめでとうしいなちゃん。貴女が来てくれること、すごい嬉しく思えるわ」

そう言われるとしいなは更に嬉しくなった。本当に気に入ってる2人

しいな「うん!だから私が来たらなんだってやるわ!遺跡のことならすっ飛んで行くんだから!」

しいなが言うと彼女はどんと胸を叩いた。しかし力があったのか乳房のあたりを叩いてしまった

しいな「いたた…おっぱいを叩いちゃった」

牧「んもう。女性なんだから大切なところは大切にしなさい」

タツジ「あっはっは!パワフルで何よりだ」

牧は注意してタツジはおもしろがっていた

タツジ「あ、そうそう。入社式もするからね4月になってすぐに式をするから」

しいな「わかったわタツジさん!それじゃあ次は入社するときに!」

牧「ええ。よろしくねしいなちゃん」

そう言うとしいなは出ていった。しいなが出た後2人は話していた

タツジ「…本当に、しいなちゃんが来てくれるなんてとても嬉しいし期待もしてる」

牧「そうですね。あんなに元気の良い子が来たら私達も負けていられませんよね」

タツジ「だからこそ!私達はもっと頑張らないと行けない!…げほっげほっ!」

突然タツジがむせた。牧は慌てる

牧「た、タツジさん!」

タツジ「いや、大丈夫。気にするな」

そんな会話があった

会社を出たしいなはもう一度会社を見た。これから働く会社。どんなことが待っているんだろうか?

しいな「遺跡のこと…それでも胸が震えるわ。どんなことが起こるんだろう?想像してみるわ」


しいなは次にアヤメ神社に行く。もうあまり太陽が出てない時間帯だがそれでも行きたいと決めて行くことにする

もちろん、レニのことであった。中学、高校、そして大学と。レニに会って色々とはなしていた

そして今。卒業をして会うことにした。神社の階段を登り境内へ。そこにお目当ての人物がいた。レニであった

レニに会って大きい声でしいなは言う

しいな「レニさーん!」

そう言うとレニは反応する。いつもどおりのにこやかな笑顔で反応した

レニ「しいなちゃん。まあ、その姿。もしかして卒業式ですか?」

しいな「そうだよ!今日卒業式だったの!この姿を見せたいと思ってレニさんに会ったんだよ!」

レニ「嬉しいですわ。わたくしも大学次代のことを思い出します」

レニが言うとしいなは更に近寄る

しいな「今度ね。牧さんがいる会社に行くことになったのよ。遺跡調査隊の一人なんだ!」

しいなが言うとレニは喜んだ顔を見せる

レニ「そうなのですか!牧は意外とあれこれ指示する人ですから注意してくださいね」

しいな「大丈夫よ~。怒られてもあまりくよくよしないから!」

そう言うと2人は笑い合う。レニは思ったが本当にしいなの行きたい場所に行けて本当に幸せそうな顔をしてる、と

レニ「クスクス…なら大丈夫ですわ。今後もぜひともわたくしの神社に来てください。相談でもなんでも乗りますよ」

しいな「ほんと!嬉しい!レニさん。これからもよろしくね!」

レニ「ええ、こちらこそ」

しいな「じゃあそろそろ行くね!レニさんお疲れ様!」

レニ「はい。お疲れ様でした」

そう言うとしいなは挨拶を終えて神社を出ていった

レニが境内にいた。しかし、レニはさっきは笑顔だったがどこか寂しい思いをした。悲しい顔をする

レニ「…しいなちゃん。貴女はよくできてますわ。汚れたわたくしとは違う凄い人。わたくしが生きてる間に貴女はどうなるでしょうか?

わたくしはエルフ。きっとしいなちゃんが先に天に行くと思いますわ。そして友人達…。貴女は汚れのないヒューマンでいてほしいですわ…」

レニは寂しそうにポツンと境内の真ん中でつぶやいた


夜。しいな自室でこれからの楽しみと希望で酒を飲んでいた。夕食が終わったので晩酌である

しいなは既に成人済の人間。お酒とは言えどビールである。人間でありながらなかなかの酒豪でマーガレットはあまり飲まないタイプであった

しいな「ごく…ごく…ぷはー!やっぱり疲れたときに飲むビールは美味しいわ!…でも仕事してからこうやって飲めるかしら」

そんなこと言いつつしいなはスマホを見る。高校時代に交わした友人だったり大学の仲間だったり…

しいなは元々友好的で良いヒューマンだ。そんな彼女は今でも会話アプリで連絡をとっていた

しいな「よーし次はこの国特有の酒、ヒダンゲビール持ってこよ!美味しいんだよね~!」

そう思ってしいなはリビングの冷蔵庫に行こうと思ったら着信音が鳴る。なんだこんなときに…

しかし無視できるわけが無かった。今ユキノウエのいる大切な後輩、シャニオンだったからだ

しいなは電話をとる

シャニオン「先輩?どうもシャニオンです」

しいな「シャニオンちゃん!元気にしてる?」

シャニオン「はい。体は元気ですが、いかんせん精神のほうはイマイチですね…」

体は元気だが精神面がイマイチ?よくわからないこと言われてクエスチョンマークが出る

しいな「どうしたの?フィジカルのほうが良くないって?」

そう言うとシャニオンは電話越しから重い口が開く

シャニオン「実はですね。ウチの友人にネネっていうのがいまして。彼女、ウチの大学を飛び級して卒業したんですよ」

しいな「飛び級…え!?つまりわずかな年数で卒業したの!?」

シャニオン「簡単に言えばそういうことです。クリスタルウィンター大学はかなり難しい大学なのに、本当に頭の良いネネは卒業しました

そんなネネに悪く言えば嫉妬ですよ。ウチだって真剣に学んでいるのに、飛び級してあっという間に卒業したんです」

飛び級…しいなが卒業した大学にはそんな人はいなかった。聞いたことがない。そのネネはとんでもない存在だろうか

しいな「す、凄いわね…で、そのネネちゃんって今どこに?」

シャニオン「最後の情報だとサフィーラの宇宙センターに行って今国際宇宙ステーションにいるみたいです」

しいな「…じゃあそのネネちゃんに嫉妬したわけだ」

シャニオン「はい…おまけに国際宇宙ステーション、いわばルナリアって呼ぶんですけど…彼女、艦長に愛されて幸せそうな日々を送ってます。

そんなネネを見て、ウチ…とても不安になりました。ネネにあってウチに何が足りなかったのだろう…そう考えてました」

どういう言葉をかければいいのだろう。しいなは慰めるように発言する

しいな「…シャニオンちゃん。決して、貴女のやってることは正しいのよ。ネネちゃんだけが特別なのよ。シャニオンちゃんは悪くない。

だから悔やまないで。だって知ってるもん。シャニオンちゃんは優秀なんだって。中学校のときからそうだったわよね?

私達より違う、シャニオンちゃんは頭良いことをずっと思ってたもの。落ち込まないで。大丈夫。私はシャニオンちゃん信じてるから」

そう言うと電話越しからシャニオンが泣いてるような気がした。ぐすっ…ぐすっ…そういう言葉が聞こえた

しいなは酔ってはいたが酒癖は決して無い、普通の感情でシャニオンを慰めていた

シャニオン「ありがとうございます…先輩…!やっぱり先輩を友人にして正解やったわ…!」

しいな「笑ってよシャニオンちゃん。いつもどおりに何か頭の良い言葉、言ってよ。それがシャニオンちゃんって存在だから」

シャニオン「はい…!ウチにとって先輩は大切な人です…!だからもうくよくよしません!」

若干泣き声に近い言葉だった。でも、しいなはシャニオンが笑顔の顔が浮かんでいたような気がした

しいな「どんどん私に頼っていいのよ~。シャニオンちゃんは卒業したらユキノウエにいるの?」

ちょっとだけ話題を変更した。シャニオンはすぐに答えてくれた

シャニオン「ウチ、卒業をしたらヒダンゲに戻ろうと思っています。ヒダンゲでどこか就職したいと考えています」

しいな「そうなんだ!じゃあ戻ってきたら遊ぼうよ!中学生の時みたいに遺跡を回ろうよ!」

シャニオン「嬉しいです。そうしましょう」

しいな「元気出た?」

シャニオン「はい。お陰様で」

しいな「よかったわ」

シャニオン「色々ありがとうございます。じゃあそろそろ寝るので。失礼します」

しいな「ええ。おやすみシャニオンちゃん」

プツン…

通話が切れた。シャニオンがそんなことで悩んでいたとは思わなかった。しかし飛び級…そんな不平等な制約をしたのは誰なんだ?

ふと、しいなは中学生の時に着た服を見た。中学生の時が一番楽しかった、そんなしいなだった。制服は飾っていた

誰にも譲渡もせず、いつかどこかで着るときに丁寧に保管して飾っている。制服を見て中学校のころを思い出す

マーガレット、シャニオン、りなと遺跡を巡り、色々なことがあった。そして今度は遺跡を仕事にする就職もできた

小学生のころ遺跡の本を読んだのがある意味運命が決められた出来事だったのだろう。そう思ったしいなだ

…ちょっとの間だけ中学生になろうか。ビールを飲むのを止めてしいなは制服を着る

制服を着た。全然キツくなくしかもピッタリサイズで着ることができた。おまけのほぼお守りのヘッドホンも装着した

今使っているヘッドホンはBluetooth物だがいつも大学に行くときに付けていた。大好きなヘッドホン…

そんな制服を着たしいなは鏡に向かい自撮りをした。これはマーガレット、シャニオン、りなに写真を送ろうとした

会話の内容は「私、中学校に逆戻りしたわ」というちょっと意味わからん内容。3人に送った

するとすぐに返事が来た。マーガレットは「お前まだ着れるのかよ…」とシャニオンは「先輩すごいですね!中学校が懐かしいわ~」と

りなは「私も中学校のころを思い出します!まだ着れるなんてすごいです!」と言った返事だった

それぞれの感想を言われて嬉しくなったしいな。ベッドで横になり、中学校のころをまた思い出していた

あの時は輝いていた。まるで七色に光る、シャイニーカラーの日々だった。夢中だったからこそ、嬉しい日々だった

そしてまた、輝いていた趣味の遺跡のことで入社する。延長線上のことでまた遺跡に関われる。しいなはまた嬉しく感じた

酔いのせいか。だんだんと眠たくなった。寝間着に着替えようかと思ったが、このままでいいと思った

しいな「私…きっと…中学校のころのことを忘れずに…これからも遺跡のことは続けるわ…」

独り言を言うとしいなは静かに目を閉じた

しいな「期待しててね。マーガレット、シャニオンちゃん。りなちゃん。私、頑張るから」

しいなはゆっくりと眠った。春とは言えど涼しい空気があった


ヒダンゲの夜

春なのに涼しく希望に満ちた明日が待っていた



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