第28話 先輩、にゃあと鳴く。そして立ち上がる颯太②
「う、うーん……」
二度寝から目が覚めた颯太は、横たわったまま窓の外を見上げた。
まだ、陽は十分に高い。
「体……何か、重いや。夜中熱も出てるし無理しないようにって先生から言われてるから、ストレッチくらいしかできないけど……体がなまるってこんな感じなのかな」
颯太は呟いて、体を起こした。
が。
太ももを中心に、足に違和感を感じた颯太。
「え?足動かない?!え?え?」
慌てて掛け布団をめくる。
「なぁ?!」
そこには。
颯太の太ももを枕にして、制服姿ですうすうと寝息を立てる蘭が丸まっていた。
「ちょ、ちょっと!蘭先輩!いつの間に僕の布団に?!」
蘭の背中を揺さぶる颯太。
ん。
……むにゃ。
んうー。
だが、何度揺らしても全く起きない。
「蘭先輩、起きて……全く起きる気配がないや。もー」
諦めた颯太はため息をついて、膝枕で颯太に寝顔を向ける蘭の横顔を眺めた。
●
「蘭先輩は……どれも、蘭先輩なんですね」
颯太は、膝の上の蘭を眺めながら呟いた。
窮地に陥った久世院の為に、颯太の為に怒気を放つ蘭。
子犬のように本気でじゃれてくる蘭。
頬を子供のように膨らませる蘭。
級友の為に、毎日自分の昼食を差し出す蘭。
あかんべえ、とお
「まっすぐで、優しくて、力強くて、凛々しくて、無邪気で。どれも、蘭先輩なんですね。……そして、ほんの一瞬だけ見せた憂い。教室に来た時や遠鳴さんと話している時に見せた表情……貴女は特別扱いをされるのが嫌なんですか?」
颯太はそっと蘭に掛け布団をかけながら、言葉を続ける。
「僕が、もしこれからも……先輩後輩として貴女の傍にいさせて貰いたい、貴女の寂しさや切なさを和らげられるような後輩になりたいって思ったら、迷惑ですか?」
「また、台詞の練習で中庭に行きませんか?僕のご飯を一緒に分け合いますか?あ、あんまりくっつかれると恥ずかしいですが……いろんな話をして、いろんな事をしませんか?僕は……蘭先輩の事、もっと知りたいです。笑顔が、見たいです」
と、颯太が自分の思いを語りかけていた、その時。
長い
蘭がぱちり、と目を開けて、大きな瞳で颯太を下から見上げてきた。
話を聞かれていたのか、と慌てた颯太。
しどろもどろに、蘭に向かって語り掛ける。
「あ、あの!びっくりしましたよ!いつから僕のベッドで寝ていたんですか?あと、その、えっと……僕の今の話、聞いてました、か?」
恐る恐る問いかけた颯太。
「ん……」
「そんな!起きてるんなら教えてくれても!ああ、あのですね、さっき言った事は違くって、じゃなくて違くなくって、あの、その。ちゃんと、お、お話をしましょう」
顔を赤く青くさせる颯太を不思議そうに見つめた蘭は、
「……んにゃあ」
猫手で颯太の胸板を、ぽし、ぽしと叩き、時折爪でひっかく真似をしている。
「今度は、猫ですかっ!!!」
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