12話 罵声とカレーライス

一色だけではない。一緒に食べてた島野、穂村、水森、周辺にいる人たちも、

罵声にビクッとしていた。


一色は罵声が聞こえてきた方向を見ると、驚きの光景に目を丸くした。


罵声を浴びてるの、俺の左隣の席に座ってた女子じゃないか!


名前は何で言うんだっけ……


おい、岡崎!! 自己紹介忘れてる女子いるぞ!!


ともあれ……なんで? 何で罵声浴びてるんだ?

一色は様子を伺う。一緒に食事をしていた穂村、水森も様子を伺っていたのだが、

島野は

「おい!! 何やってんだよ!!」

すぐさま罵声を浴びせた女子の元へと向かっていくのだが、

島野よりも背の高く、スタイルの良い女子達に押さえつけられた。


と島野は葉乃川を助けようと試みたが、失敗だ。

「困るなぁ……島野くん。邪魔しちゃ。」

「女子に負ける君、ダサいね」

と島野を真っ先に押さえつけた女子はニッコリと笑っていた。

「CCBSがあれば……こんなの……」

「ざーーーんねーーーん!! CCBSはCCBSを使用した授業内、CCBS練習場内、CCBSを使用した大会以外で使用してはいけませーーーーん!!」

と押さえつけた女子が煽ってくる。島野は助けられないことに悔しがっていた。


2年G組の文化系3人組と水泳部の女子は先生呼んでくると言って食堂を後にしていた。


まずいな……島野がピンチだけど……

冒険吐いた女子、島野を抑え込んでいる女子達の周りに、手強そうな男子が何人も囲っているんだよなぁ……


どうする……うかつに攻めても、島野のようになるだけ……

ど、どうやって助ける……

一色が考えていると、穂村は葉乃川と島野を助けようと駆け寄るが、

すぐさま手強そうな男子達が穂村を取り囲んだ。

「お前ら、やるか! ああ??」

と穂村はガンを飛ばしていた。島野、葉乃川を助けるために、穂村は暴れる。


今がチャンスだ……


穂村が暴れているうちに、そーーっと近づいて……


ど……どんな会話している……


一色はこっそりと近づいて、食堂の机を使って、隠れながら、話を聞いていた。


「お前、F組のこと馬鹿にしたり、虐めたり、F組の女子の彼氏寝とったりしてたよな!」


「し・て・た・よ・な!!!」

女子生徒は、さらに大きな声で罵声する。


罵声を浴びせられているG組の女の子は、震えていた。


F組のことを馬鹿にしてた? 虐めていた? 彼氏寝取ったりした?


え?? 罵声を浴びせられているG組の女の子が??


マジかよ……本当なのか……


で、罵声をしているのはF組の女子生徒か?


「で、F組やG組を馬鹿にしてた葉乃川詩織がF組どころか、G組に降格とはな」


「いい気味だわ!!」


その女子は高笑いしていた。彼女たちの笑い声が、食堂に響き渡る。


俺の左隣にいた女の子……葉乃川詩織って言うのか……


そして、高笑いした女子がテーブルに置いてあるカレーを見て、

「私、カレーは辛い方が好きなんだよね!」

とカレーに大量のタバスコをぶっかけていた。すると、カレーにタバスコをぶっかけた友人3人が葉乃川を押さえつけた。


「ちょっと!! 何すんのよ!!」

「ちょっとさ。これ食べてもらおうか!!」

「あ・じ・み・さ!!!!」


とスプーンで大量のタバスコ入りカレーを掬った後、葉乃川に食べさせようと、

スプーンを近づける。葉乃川は涙目になっていた。


「おい!!やめろ!!」

と島野は叫ぶ。


マズくないか、一色がそう思って止めようとするが、

突然、背中を蹴られた。


な……何が起こった……


蹴られた衝撃で、一色は倒れ込む。


そして、

「なーーーーんて、嘘だよ!!!」


と大量のタバスコがかけられたカレーを葉乃川の髪の毛にかけたのだ。


緊張感が漂う食堂。周囲はドン引き状態だった。


「ってかさ、何か反応したらどう?」

「ねぇ??? 何か反応したら??」

その女子は葉乃川を問い詰めるも、

葉乃川は黙ったままだった。その女子は

葉乃川の態度にイライラしたのか、


「謝罪しろよこの野郎!!!」

と罵声する。


さらに、

「おい、口開けろよ。口!!」

「あ・け・ろ・よ!!カレー、口の中にぶちこんでやるから!!」

と暴言女子は更なる罵声を浴びせる。


「私、着替えとトイレットペーパー持ってきます」

と2年G組の眼鏡卓球女子は水森にそう伝えて食堂を出て走っていく。


くそ……葉乃川さんすまん。止められなかった……

というか……蹴られたの……もしかして……気づかれたからか……

一色は倒れながら、そう思っていると、


「女子同士の盗み聞きとか……マジないわ~~」

と暴言吐いている女子の取り巻きが、一色を煽ってくる。

お前か……お前が蹴ってきたのか……

「ははは、こんなデカい声だしているから……盗み聞きしなくともしっかり聞こえたわな………」

と一色は言った後、


「じゃ、堂々と女子同士の暴言大会聞いてくるんで」

と一色は葉乃川さんのいる方向へと走った。


「て、てめぇ!!」

「蹴るんじゃなくて押さえ込むべきだったな!!」

と一色は蹴ってきた女子を煽り返す。


俺が蹴ってきた女子を煽ったことで、周囲の視線は今、俺に向かっているけど……


暴言女子の取り巻き(男子たち)が俺の方へと走っている。


こりゃ、葉乃川さんを助けるの、今は厳しそうだな。


「穂村!!」

「わかってんよ!!」

と、穂村は手強そうな男子たちをタックルで蹴散らすと、

島野を羽交締めにしている女子達に、飛び蹴りした。


ナイス、穂村!!


男女ともに倒れ込み、

島野は羽交締めから解放されると、すぐさま葉乃川を助けようとするが、

葉乃川の周りは女子が囲んでいて、ピンチ状態になる。

しかし、そんな状況を打破したのは、穂村。


穂村は周りを囲んでいる女子を殴り倒し、葉乃川を助けようとする。


「ちょっと!!!痛いじゃない!!」

「女子に暴力なんてサイテー!!」

「うっせえ!!!お前らのやってることは最低だ!!!1人の女子を集団で虐めやがって!!!」

と女子の反感を買うも、穂村はそんなことは知らんばかりと、また女子を殴った。


穂村の助けもあってか、島野は葉乃川の元へと駆けつけることができたのだが、

島野が葉乃川を助けた時には、葉乃川の髪の毛が完全にカレーまみれになっていた。さらには制服にも大量タバスコ入りカレーをたっぷりとかけられ、口の中もカレーまみれになっていた。

床にカレーがポタポタと垂れている。


葉乃川の頬には涙が流れていた。

「おい!!島野!!早く葉乃川を連れて外に行け!!」

と穂村が叫ぶと、すぐさま島野は葉乃川の手を握り、逃げようとする。

「泣いて許してもらおうと思うなよ!!!

このクソビッチ!!!」

「おい、島野と葉乃川を誰か捕らえろ!!」

とその暴言女子は暴言を吐き捨て、囲いに指示を出し、葉乃川を助けようとする島野に襲いかかろうとするが、


「はい。虐めた女子ーゲットだぜー」

と一色がぜーぜーと息を吐きながら、

その女子を羽交締めした。


追いかけられるの……大変だったぜ……


「おい、触るなよ!この変態!!」

「葉乃川を助けようとしただけなのに、変態呼ばわりされるとか、ほんと、やってられねぇわ!!あとな、お前らの関係がどういった関係なのか知ったこっちゃねぇが、食べ物を粗末にするやり方はやめろ!!!」

と一色は叫ぶ。そんな羽交い絞めにしている一色を、手強そうな男子の手によって、はがそうとする。さらに、暴言女子の囲いが、一色の制服や髪の毛にカレーをかけてきた。


「お前、何すんだよ!!てめぇ!!」

「離さないのが悪いんでしょ!! この変態!!」



一色はなんとか離れないよう奮起するも、はがれるのも時間の問題だ……


一色がそう思っていると、手強そうな男子にまたしても穂村が襲いかかり、一ピンチの一色を助けてくれた。


「さ、サンキューな。穂村」

「それより……島野、葉乃川と一緒に逃げろ」

「りょーかい」

と言って、一色は島野、葉乃川と一緒に逃げようとする。


「おい!! 逃げんなよ!!」

とその女子が言ったが、


「追いかけるなら、俺が相手するわ」

穂村が仁王立ちしながら言う。暴言女子は穂村の威圧に怯えていた。

手強そうな男子たち相手に1人で立ち向かったんだもんなぁ……

つえーーな。穂村。



一色たちは穂村に感謝すると、カレーまみれになった葉乃川と一緒に、食堂を後にした。


とりあえず、カレーをどうにかしないとな……一色の制服にもカレーのルーがかなり

付いていた。

最悪だ……制服、まだ着たばかりなのにな……


俺たちはとぼとぼと歩き、校舎の外へと出た。

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