第8話

そして、みゆきさんはというと、私が【原田】という時点で気付いていたのだと思う。


確か私が

「みゆきさんってお呼びしますね!」

と初めて言った日も、

「なつちゃんのお母様は何てお名前なの?」

と聞かれた覚えがある。

今思えば、あれは、確認だったんじゃ、、?

そこではっきり私が父の子だと分かって、自分の子と交際していることが分かって、どんな気持ちで私のことを見ていたんだろう。


恭介は、よく

「早くなつと結婚したい!!」

と言ってくれていた。

もしもそれをみゆきさんの前でも言っていたのだとしたら、、、

【恭介にどう接したらいいかわからないの】

あの時泣きながら言っていた意味も分からなくもない。ただそれを、父に相談すると父が私を認識してしまってそれこそもう父と会えなくなる、と思ったのかもしれない。だから父に相談できなかったとしたら?不倫関係だし、近くに相談できる人がいなかったとしたら?、、、本人とはいえ、何も知らない私がちょうど良かったのかもしれない。しかしだとしたら、恭介を置いていく理由は?みゆきさんからしても父との大切な子供のはず。なのになんで?、、、待って。私、お父さんに自己紹介したよね。原田なつですって確かにはっきり言ったはず。あの時、父は気付いたはず。今まで別々に暮らしていたとはいえ、自分の娘の名前くらい覚えていないのはおかしすぎる。でも、特に何も言われなかった。この辺り原田さん多いですねってよくある会話くらいしか。なんで?みゆきさんの手前、わざと知らないふりをした?そんな、、、

《ピコン》

恭介からメッセージが届いた。

「なつ、今日はありがと!ごめんな。」

恭介は、私の兄、、、。色んなことが頭の中を一気にぐるぐる回って、わけがわからなくなった。

「とりあえず、お風呂入ろ。」

私は考えるのをやめて、お風呂に向かった。

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あの日、 @anomi

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