第13話

エリシア達を乗せた車が走る。

辺りにはビルの残骸や破損した車などそこら中にが散らばっており、 

お世辞にも綺麗な状態だとは言えない道は、車内の揺れを更に酷くさせていた。

そんな中、エリシアは後部座席で密かにパソコンを操作していた。

カヤダがバックミラー越しにエリシアを眺め、呟く。


「よく酔わないな」

「......酔う?」


パソコンから目を離し、エリシアが不思議そうに首を傾げる。

カヤダは軽く苦笑いをした後に、そのまま続ける。


「これくらいの揺れの中でそういうやつを使ってたら、

普通の奴は気持ち悪くなるはずなんだがな」

「......そうなの?」

「少なくとも、俺はそうなるな。

それに――」


カヤダは途中で言葉を切る。


「......どうしたの?」

「いや、なんでもない。

少し変わるんだが、それは上手く使えてるか?」


カヤダはエリシアの持つパソコンを指さす。

それにエリシアは、


「......そこそこ」

「......ま、そうだろうな」

「わかってたの?」

「まあ、触って一日で使えるのは殆ど無理だろ」

「............」


カヤダが懐かしそうにそう言う姿を、エリシアは不思議そうに見つめていた。

そして、そのまま思った疑問をカヤダにぶつける。


「カヤダって、このセカイのひと?」

「............多分な」


車のエンジン音と、荒れた道を運転する音がその場を支配する。


「色々あってな。俺も自分がそうなのかわからないんだよ」

「......そう」

「まあでも、俺がいた世界はこんな有様じゃあなかったけどな」


カヤダは少し、自嘲気味に笑った。

エリシアが何か思い悩んだ表情で、膝に載せたそれを見つめる。


「.....あ、」

「どうした?」

「何で、行きみたいにすぐにビューン!って行かないの?」

「......ふ」


カヤダが少し小刻みに肩を震わせる。


「......なんで笑ってるの」

「............」

「......ねえ」

「いや、『ビューン!』なんて初めて聞いたんだよ......」

っくく。


かすかに笑い声まで漏らし始めたカヤダを見て

エリシアは不満げに窓へ目を移す。


「ああ、すまんすまん。

あれを使うには長い時間待たないといけないんだよ。

だから行きだけしか」

「ねぇ」


エリシアがカヤダの声を遮る。

エリシアの声は、明らかな焦燥に包まれていた。


「あれ......知ってる?」


そう言ってエリシアは、横の窓の外を指差す。

そこには恐竜のような姿をした怪物が、こちらへ走り寄っているのが見えた。

遠くからでもわかる怪物の目は酷く濁っており、


それは、餌たちを狙う目つきだった。

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