第20話 魔法について



それからドロシーが魔法について詳しく話してくれた。


「詩織が使った魔法は、指定した目的地、物や人に辿り着くことが出来なくなる魔法。

例えば敵にこの魔法を掛けて、私の家や私に近づけないように出来る。

強く掛けすぎると指定した目的地以外にも辿り着けなくなるから、永遠に彷徨うことになる。」


ドロシーは手から指から煙を出して操り、敵や家、自分の形にして説明してくれる。

その技術が気になって話があまり入ってこない。


「自分の魔力で相手と指定した場所の時空を歪めるんだ。

すると相手は指定された場所は認識出来なくなる。

時空の歪め方は、、、まあ言ってもわからないだろうから割愛する。」


一番気になるところを割愛されてしまった。

でも聞ける雰囲気じゃない。

ドロシーは怖いし、詩織は泣いてる。


「お前は自分の周りの時空だけが歪んでる。

場所は指定されてないし、詩織の魔法が不完全だから今の状態になっているんだよ。」


一通り話し終えると、ドロシーはまたティーカップを手にして一口飲んだ。


「何か知りたいことは?」


彼女のグレーの瞳が僕を真っ直ぐに見ていた。

緊張して変な汗をかく。


「どうすれば魔法は解けるんですか?」


とにかく魔法が解ければいい。

そうすれば僕の横でずっと涙を流している、心優しい幼馴染の気持ちは晴れるだろう。


「詩織が杖を手に入れ、魔法について学び、コントロールすれば解ける。

魔法ってのは掛けた本人以外が解くには危険が伴うんだ。

しかも詩織の魔法は不完全。

私でもお前の魔法を解くには一年は掛かる。

少しずつ、慎重に行わなければ魔法が暴発して、更に時間が掛かる。」


一年、、、。

僕と詩織は一年もこの世界で過ごすのか、、、。

不安が波のように押し寄せてくる。

母親、おばさん、友達、あちらの世界のことばかりが浮かぶ。


「だが、詩織本人がやるなら話は別だ。

杖を手に入れ、魔法を知り、コントロールするなら早けりゃ3日。

才能が無くても、まあ、1週間もあれば何とかなるだろう。」


ドロシーの言葉に詩織が顔を上げ、涙を拭く。


「ドロシー様!私に魔法の解き方を教えてください!」


ドロシーがニヤリと笑みを浮かべる。


「可愛い孫の頼みだ、断るわけにはいかないね。」


詩織が僕を見つめる。目と目が合う。


「蒼、私が絶対に魔法を解くから!!!」


全然理解できない話が勝手にどんどん進行して行った。

迷子になった気分だった。




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