先輩の言ってたストーカー!?
俺はオムライスを作る材料を適当に集めた。まな板の上にある程度の食材を置いて切り刻んでいこうとした時だった。
「ねぇ亮ちゃん。そういえば高熱費の支払い用紙があったよ。締切が明日までだってさ」
「え!嘘でしょ!?」
俺は手を止めた。
支払いの紙来てたのは知っていたが、締切まで目を通していなかった。
「ちょっとコンビニまで行って支払って来ます!」
「うん。いってらっしゃい」
「用紙はどこですか?」
「玄関の所に置いておいた」
俺はダッシュで玄関に向かって走り出す。
そして鍵を持って寮を出る。キチンと鍵も閉めた。
紙が三枚あり、それぞれ電気、ガス、水道代が来ている。
俺は自転車で急いでコンビニまで向かった。
「いやぁ、先輩が居てくれてよかったぁ!このままだったら全部停められてた」
コンビニまでダッシュで向かいながらそう呟く。そして、よく大学の帰りに寄るコンビニに辿り着く。
「しかし…高いなぁ…」
約2万9千円もするのか!何も節約とかせずに使いたい放題やってたらこれだけするのか。そう思うと、バイトやっててよかったと改めて思った。しかし、これを払えばしばらくは節約しなければ貯金が減る。まぁ、一人暮らしする前にちょっとずつ貯めてた貯金はまだある。だからここから出来るだけ食費やら抑えていこうと決めた。
「しばらく貧乏飯になるかもなぁ…」
そして支払いをする。現金しかできないので口座から現金を出す事にした。そしてレジで精算完了。
「あぁ、よかったぁ。でも意外と高いなぁ…。ここから寮費も引かれるとなったら…あぁ、しんどい」
どんどんと自分の貯金が減っていくと気づいた時、俺は内心帰る気力がなくなっていった。
俺はコンビニへ出て脱力気味で自転車に乗った。
「あぁ、先輩にも協力してもらわないと…」
今回は光熱費を俺が一人で払ったが、後に先輩も一緒で住むとなると少しは割り勘したいくらいだ。
それも帰って相談しよう。そう決意して、自転車を漕いで行く。
俺の行ったコンビニは先輩の通うジムのアルバイトの方にある。だから先輩の住んでいたマンションも通る訳で、相変わらず貧相な姿で建っている。俺は一度自転車を停め、外見だけでも眺めてみた。
「学生寮の方が絶対いいでしょ…まぁ安くはないけど」
そう呟いて敷地を眺めた。すると、敷地内に誰かが立っている。
屋上の階らしき所をずっと見上げている。
管理人?いや、なんだか服装が変だ。
黒のパーカーに白のラインが入ったジャージ服。更には黒のキャプでサングラス…
「……あれって…」
俺は目を疑った。あの姿の人物。何か当てはまる。
「……マジかよ!先輩、マジでストーカーされてた!?」
するとそのストーカーと思われる人はこちらに気づいて、慌てるようにその場から走って逃げていく。
「マズイ!」
ストーカーらしき人物にまさかこんなに早く自分が会うなんて思っていなかった。ストーカーは走って行くが、こっちは自転車である。スピードを出せば追い着くに違いない。
「待て!ストーカー!」
思わず叫んだ。全力で自転車を漕ぐ。シフトレバーを一番早く出来るように回して追いかけた。
曲がり角で見つけた。俺は見失わずに追いかける。ストーカーをストーカーする俺。
よく不審者には自ら近寄ってはいけない。何か怪我をする可能性が高く、危ないからというのを聞いたことあるが、俺はそんな事気にせず追いかけ続けた。
途中でまた曲がり角に曲がるストーカー。俺も跡を追う。
だが、曲がった時もうその場には誰もいなかったのだ。
「え?…あれ?」
消えた!?
取り敢えず息を整えよう。
あんな一瞬でどこへ行ったのか?
辺りには草木だけが生い茂っており、人が隠れている様子もない。
「どこに行ったんだよ…あの野郎!」
俺は、すかさず先輩にメッセージを送った。絶対に外に出ないでくださいと警告するメッセージである。
そしてストーカーを探すのをやめて、急いで寮に向かった。
あのストーカー、もしかして下から見ていたのって先輩の部屋だったんじゃ。だとしたらもう先輩の家は特定されていたという訳か。先輩の言っていた通りになる。
すぐに返信が来た。
『了解でーす』との事。
詳しくは、寮に帰ってから事情を説明する事にした。
とにかくこのまま寮に帰ろう。その際もあのストーカーを探しつつ、警察の元に相談もしてから帰る事にする。
辺りを見て、後ろに着いてきていないか確認しながら警察の所に向かう。
パトロールなどしていないのだろうか?あんなわかりやすい所にいれば捜査だってしやすい筈だ。でも、犯人が警察に見つかっていないのならこちらから言うしかない。
そして俺は真っ直ぐ警察署に向かった。
◇ ◇ ◇
事情はしっかり伝えた。その後寮に戻ると先輩にもストーカーらしい人を見つけたと伝えた。
オムライスを作る最中に先輩と話していると、さっきまでの先輩の機嫌が悪くなっていた。暗い表情となり、一切笑わなくなった。
「やっぱり…私の家バレてたんだ…」
「ええ。じゃあもうその人がストーカーって事で間違いないんですね」
「うん…まだ捕まってないんだね。ストーカー」
「そう言う事ですよ。警察の人も『その情報前にも聞いた事ある』と言ってましたからね。犯人は分かりやすい格好でいるのに捕まえられていないのは、警察側のパトロール不足って事ですよ」
「なんか私の知らないうちに近くまで来ていたって知ると、怖いなぁ。亮ちゃんがいなかったら今頃一人で怯えていたと思うと、私本当に亮ちゃんが居てくれてよかったなって思ったよ」
ストーカーの話をしたら、先輩のテンションが少し落ちている。コンビニに行く前なんか、あんなに楽しそうに俺の事弄っていたのに。今となってはソファーの上に乗って膝を抱えている。こちらにも顔を向けずに…
「俺も先輩がストーカーに遭っていたってもうこれで確信しました。これからは、安全性を考えて、学校にも相談する事にしましょう。後、大学の登校時も絶対に一人で行ってはならないですからね」
「わかってるよ。じゃあ、次行く時一緒に行ってくれるよね?」
「当然ですよ。念の為、先輩の事も考えてバスで向かいましょう。丁度近くにバス停あるの知ってます?大学の近くまで停車してくれますからそれに乗りませんか?」
「うん。そうする!じゃあ、晩御飯作るの手伝おうか?」
元気になった先輩。機嫌が取り戻せて良かった。
「あっ、もう出来上がりましたよ。プレートに盛り付けるんで、用意だけしてほしいです」
俺が作ったオムライスは、よく料理動画配信者で作っている、卵の部分を半分に割ったらパカッと中からトロトロの卵が被さるやつである。こっちで一人暮らしをしてから興味本意で見た事あったが、作った事はなかった。しかし、我ながら上出来な方だと思う。
「さぁ盛り付けますね」
プレートを二つ用意してくれた先輩。ライスの方はもう先に出来上がっており、その上にまず一人目の分を盛り付けた。
「うわー。これって割るやつだよね」
「えぇ、初めてですけど…」
「でも、よく出来てるんじゃない?」
「試しに割ってみてください」
先輩は包丁ではなく、スプーンで割った。綺麗には割れていないが、動画のようなトロトロな感じはあった。
「美味しそう!亮ちゃんは料理上手いんだ!」
「ありがとうございます。先食べてていいですよ。念の為カーテン側には座らないようにしてください。外からストーカーの人が見えるかも知れませんから」
「わかった!」
そして先輩はカーテン側とは反対側に座る事にした。
そして俺は自分のオムライスを作ることにする。
「さてと、俺のは普通のオムライスでいいかな?」
そう呟き、半分に割るオムライスではないのを作ろうとしたが、先輩が美味しそうに食べている様子を後ろから見ていると、自分も食べたくなった。
「…やっぱ同じの作ろ」
そう言って同じオムライスを作る事にした。
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