第二十六話 『風邪。看病。二人きり。そして何も起こらないはずがなく…④』

「はいどうぞ。お口に合えばいいのですが」

「おお、普通に美味そうだ…!」


高瀬さんが湯気の立ったお皿を持ってきた。

コレは…俗に言う卵雑炊というやつか!

流石高瀬さんだ。やはり料理も完璧なのか、ぱっと見でもう食欲が湧いてくるぜ…


「本当になにから何まで、魅依さんには感謝してもしきれないですね…」

「いえいえ。大輔君が困っていたら、助けるのは当然です」

「……」


その言葉がどういう意味を持つのかは深く考えないようにしよう。そうしよう。

きっと思考がどツボに嵌ってしまうだろうから。


ひとまず冷めないうちに雑炊を食べてしまおう。

どんな料理も出来立てが一番、ではないのもあるだろうけど大半が美味しいからね。


「うまっ…」

「それは良かったです」

「上手く言えないけど、ほっとする味がします…」

「だし汁に、ご飯と卵入れたシンプルなものですが…そうですか。気に入っていただけましたか」

「はい、マジでうまいっす」

「ふふ」


その何というか。

……はっきり言って、押しの強い高瀬さんのことだから、あーんとかしてくるのかなぁって思ったりしてました。勘違いしないでくれ。別に俺がしてくれないかなーなんて望んでいる訳ではないよ?

いや、今のは自分に嘘ついた。

男なら一度は美少女にあーんはされてみたいだろうが!(クソでか主語)


「……(ニコッ)」

「……(ハッ!心を読まれた気がする!?)」


ちょっと待て高瀬さん今の俺の心は決して読んではいけない。フリではない。本音だ!

だって高瀬さんにあーん何てやられたら俺が羞恥心と歓喜で死んでしまう!


あのー高瀬さん?スプーンを持って近づいてきてどういうおつもりで?

あー高瀬さん困ります!高瀬さん!?

主に俺の羞恥心が限界を迎えてしまうからやめてー!


「ふふ、大輔君」

「ハイナンデショウカ?」

「少しお椀を貸してもらえますか?」

「マダナカニハイッテイマスヨ…」

「大丈夫です、すぐに終わりますよ?」

「それ俺が大丈夫じゃないです」


いや本当に。

あなたは私を殺す気ですか…?


「はい、あーん」

「……」

「あーん」

「………」

「冷めますよ?」

「ハイイタダキマス」


ある意味すごいな。一瞬にして味を感じなくなってしまった。

ていうか。

これもう普通に友達の範囲超えてね?

風邪の看病してもらって。こんな行為()までして。

やっぱり高瀬さん俺に気があるのでは……なんて思考をした瞬間に俺は死ぬ。

社会的にも物理的にも死ぬ。

許されよ…こんな妄想を少しでもした私を許されよ…


「……(むぅ)」


あ、なんか嫌な予感がした……が、気のせいだと思うことにした。

隣の人がなんか不満げだけど気のせいですはい!

それよりも。あーんはもうやめてくれますか…?(懇願)


「あ、あとは自分で食べますので!」

「…であれば冷めますので、早めに食べてくださいね?」

「はい。ありがとうございます…」

「そして今日は早めに寝てください。そうすれば明日には学校にいける様になりますよ」

「了解です…」


何回も言うけどほんとに頭が上がらねぇ。

これは他の人たちが女神様と崇める気持ちがわかった気がする。


そしてうちの母親よ。なんなら高瀬さんの方が母性あるんちゃうか?


「では元気になれば明日学校で会いましょう」

「は、はい。じゃあ…また明日」


風邪を引いて、その看病に高瀬さんがきて。

色々あって、男の夢?の一つである女の子からのあーんもして。

真面目に俺の息子が限界でした…

だって仕方なくね!?美少女が一つ屋根の下で甲斐甲斐しく世話をしてくれるんやぞ!

そんな状況で反応するなとか、いくら風邪ひいて弱ってても無理ゲーだろうが!

断言する。あの状況で反応しないやつは男として終わってるね!


え、気持ち悪い?…時として正論は人を傷つけるんだぞ?


でも、ほとんど寝たきりだったから高瀬さんには気づかれてない筈。ないよね?

気づかれてたら、うん。

考えないようにしよう。そうしよう。

言われた通りに早い時間だけど寝よう。現実逃避とかそう言うのじゃないんだからね!









「……なかなか自己意識は変えられませんね。それでも、前向きになってきているので一歩前進です」

「あと大輔くんも、男の子でしたね…」

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影の薄い俺が学校一の美少女を助けた結果〜え、なんで俺に気づけんの〜 吉奏輝 @TinsKou100052

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