【 三日 】


 もう一度だけ許してみようと思った。

 クリスイブから3日後、7階の彼の部屋へと戻り、久しぶりに部屋を掃除する。


 寝室のベッドの下を掃除機で綺麗にしていると、何かが詰まった音がして掃除機が止まる。

 掃除機の中を開いてみると、そこには女性もののピンクの下着が絡みついていた。


 見覚えはない。私のものではない……。


 それが、もう一度やり直そうと彼が言った、わずか3日後のこと。


 『三日坊主』という言葉は、夫のためにできた言葉なのかと思うほど、浮気癖は治っていなかったんだ。


「4階の部屋を解約しなくて良かったな……」


 そのピンク色の下着を見ながら、そんな言葉が自然に漏れる。

 掃除機から取り出したほこりまみれの下着をベッドの上に置き、そのまま7階の部屋を出て、4階へと戻った。


 こんな屈辱的なことはない。


 同級生だった友達が、皆、羨ましがるほどの経済的にも、社会的地位も高い光輝さんの妻。

 マンションの最上階に住む社長夫人として、世間的にも幸せな妻のはずだった。


「美雪、お前はいい人と巡り合ったな」

「美雪、おめでとう」


 そんなに裕福ではなかった両親も驚きと共に、私の結婚を電話口でそう喜んでくれていた。

 私は、生まれて初めて親孝行ができたとその時思ったのに。


 『戻らない』とだけ紙に書き、テーブルの上に置いてきた。


 その日のベランダで夜遅く、子猫のニャーちゃんとスノードロップを眺めていると、また今日もこのマンションから飛び降りる女性を目撃した……。



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