第34話 (さらに)異世界転生パロ
「アイミーヌ、現時点をもって貴様との婚約を破棄するっ!俺の愛らしいマーマレードを悲しませた罪は重い」
「そんな・・・・・・」
豪華絢爛なパーティー会場、今日はこの国の第一王子の誕生日のため、それを祝うために各国から貴族を呼び寄せているのだ。
その余興と言わんばかりに会場の真ん中に呼びつけられて、今現在、断罪されているアイミーヌ=ウミーノ。
彼はこの世界、前世の乙女ゲームの世界に悪役として転生してしまった男子高校生、
大好きな兄と幸せな日々を過ごしていた前世・・・・・・。ある日目を覚まし、自分が乙女ゲームの世界に転生してしまったことを知ったときの絶望感といえば言葉ではとても表すことができなかった!
この世界へと転生した経緯は全く覚えていないが、今はあの、自分を優しく甘やかしてくれた兄はいない。そうなのだ、前世愛海を溺愛し、どんな脅威からも守ってくれた存在はこの世界にはいなかった。
自分が悪役だと気づいてから、身の回りにいる人物や自分の立ち居振る舞い、言葉遣いなど気をつける点は全て気を遣って生きてきた。勝手に決められた第一王子との婚約も、必死に回避しようと思ったがゲームの補正なのかどうにも逃げられず、ならば攻略対象者たちによる断罪だけでもなんとか回避しようと立ち回ったが、学園で登場してきたヒロインはなんとも頭の回る小憎たらしい奴で、アイミーヌは彼女の策にまんまとハマってしまったのだ。そう、アイミーヌを貶め王子の婚約者から外させ、さらに国外追放させるという策である。
今までの婚約者の所業に憤怒を露わにする王子とその後ろに控える攻略対象者たち。涙ぐみながら王子の影に隠れるヒロイン。とうとう回避できなかったかと青ざめるアイミーヌ。ざわざわとざわめき合う会場の上位貴族たち。
腹黒いヒロインの策は、順調に進んでいったと思われた――
一人の男が吠えるまでは。
「許さんっ!!!」
「(え・・・、に、兄ちゃん・・・!?)」
「いっ、いきなりどうしたのですかマリアヌス!?」
「姫様、陛下、いきなり大声を出してしまい申し訳ございません。あのように、多人数で一人のか弱き者を責め立てる様子に胸が痛みまして・・・・・・」
美しい男が男らしい眉を下げたことに、周りで見ていた者たちがほぅっと見とれると共に、皆も同情の雰囲気を出し始める。
今夜貴族たちの話題に上がっていた、隣国の噂に聞く蝶のように人の目を引く姫と、これまた隣国では英雄として名高く民たちからも人気の高い、逞しい身体をした美男子こと姫専属の騎士、マリアヌス。皆の注目を集めていた彼が、なんとアイミーヌの断罪の最中に割って入ってきたのである。
そして彼は皆の視線を集めたままそれを気にした風もなくやっと会えた、愛しい弟の目をしっかりと見ると、今の状況に対して沸いてきた怒りに再び身体を震わせながら、会場一杯に吠えた。
「愛海を断罪?追放?んなこと許せるかぁああああああ!!?こんなに愛らしい愛海がそんなことするわけねぇだろうが!!!愛海は悪くない!
俺は、俺は愛海を悪者にするこの世界を許さないっ!!!!!」
お兄ちゃんは許しませんっ! 狼蝶 @momogi
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