第16話 また行きたいから

 「どうする?これから。ツアーは終わったけど。まだすぐには戻らなくてもいいかな?」

 「もっと金沢に居たいような気はするけど、明日からまた仕事だから・・・。」

 今回の旅行では、育子いくこは有休をとらなかったのだ。

 「俺はまだ、旅行気分を味わいたいな。」

 「また今度、別のところに行きましょうよ。その時には余裕をもって旅行できるように、前後に有給とるから。今日はもう帰りましょう。」

 「そうか、仕方ないな。・・・ねえ、今度は、海外に行かない?」

 「え?もう次の旅行の計画?」

 

 帰りの新幹線の中で、次の旅行先は何処がいいのか、の話になった。

 「俺は今まで、一度も海外には行ったことがないんだ。」

 「そうなの。」

 「うん。俺、男友達とは薄かったし、今のホスト仲間とは食事にすら行かないし。女友達もいないから、旅行に行くとかそういう雰囲気にはならなくて。」

 「そうなの。私は・・・旅行については自分の話はしないけど・・・そうね、アジアならってところかしら。ヨーロッパだとか、アフリカは、旅行代金がね・・・。」

 「韓国なら、もしかしたら金沢よりも時間がかからなかったりして。」

 「韓国に行きたいの?」

 「海外旅行一回目は、お隣の韓国だけにしようか。またその次に、香港とか台湾とかにも行きたいな。」

 「それじゃあ、韓国にしましょうか。韓国だったら日帰りツアーとかもあるくらい、すぐに行って帰って来れるから、また一泊二日でもいいけど。」

 「俺はもう少し、いくちゃんと一緒に居たいよ。日本じゃない外国で、二人きりの時間をたくさん過ごしたいよ。」

 あまり睡眠をとっていない三日間であったにも拘らず、二人は帰りの新幹線の中で切れ目なく喋っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る