第3話
「いらっしゃいませ」
ウエイターが来客者に挨拶をする。
それをきっかけに我に返って急に気恥ずかしくなった私とメイソンは顔を赤くしながら目線を外し、思わずその来客者を見た。
「ジェダイン・・・」
「ジャンヌ・・・それと・・・・・・お前は」
新たな来客者はジェダインだった。気まずい雰囲気が私を襲う。
「店を変えようか」
メイソンがそう言ったので、私も頷く。
「ちょっと、待て」
しかし、ジェダインはなぜか私たちのテーブルへやって来て、引き留めようとした。
「なぜ、この男といる?」
はい?
「あなたには関係ないでしょ?」
もう婚約破棄したのだ。私とジェダインは赤の他人。元恋人とすら呼びたくも呼ばれたくもない。
「いいや、ある」
なのに、ジェダインは情熱的な目で私を見つめ、私の両肩を掴む。
「婚約破棄を解消したい」
「ふざけるなっ!!」
私のことで私より先に、大きな声で怒ったのはいつも通りメイソンだった。
「お前のせいでジャンヌが悲しんだんだぞ!? お前のようなジャンヌを悲しませるような奴にジャンヌは渡せないっ」
「ああん? 何様だ、おらっ」
メンチを切って、ジェダインがメイソンに突っかかっていく。
「ちょっと、二人とも止めてよ」
私が止めても二人は眼を飛ばし合って、言うことを聞かない。
「ジャンヌは僕が幸せにする」
メイソン・・・。今まで親友だと思っていたメイソンが急に男らしく見えて、自分でもわからないけれど、心が高鳴っている。そんな私をちらっと見たジェダインは再びメイソンを見て、
「てめーみてえな、腰抜けうじうじ野郎がジャンヌを幸せにできるわけねーだろうが」
とメイソンのおでこに自分のおでこを擦り付けていく。
「キミみたいな単細胞で計画性のない男こそジャンヌを幸せにできるわけないだろうが。それに、キミはジャンヌとの未来がつまらないと思ったんだろ? 僕ならそんなことはありえない。僕は間違いなくジャンヌといれば幸せだし、ジャンヌも同じくらい幸せにしてみせる」
「無理無理。お前みたいな奴は、ジャンヌが喜ばなかったらどーしよーとか言って、結局何もできずうじうじして、一緒にいるジャンヌがお前の湿っぽさが嫌になるんだよ。知ってるね俺は」
ジェダインは今度はメイソンの胸に人差し指の先をぐりぐりと押し付けていた。メイソンは手を出し返さないで本当に偉いし優しいなと思った。
「でも、キミはジャンヌを幸せにできない」
「あー、否定。「でも」なんて使うってことは自信がないでやんの。てか、俺がてめーだったら、婚約破棄した次の日にプロポーズしてるね。まだ、それもしてないんだろ? でも、それ正解。お前はジャンヌを幸せにできるわけないんだから。さっさ、帰った帰った」
「それはキミに婚約破棄されてジャンヌが凹んでいたからだよ。そういう配慮や相手の気持ちを考えることができないキミがジャンヌを幸せにできるはずがないんだ。確かに自信はないっ。でも、ジャンヌを想う気持ちは誰にも負けないっ。キミがジャンヌと結婚すると聞いた時僕は激しく後悔した。もう二度と同じ過ちは繰り返さない。キミみたいにエンジェルを手放すバカはあっち行け」
「俺だってな。ジャンヌがいなくなって後悔してんだ。なめんな。てか、俺の方がぜってー後悔しているしな。俺はお前の数百倍ジャンヌの良いところ知ってんだ。上辺だけしか知らねーお前こそどっか行け行け」
「何をーーーっ」
「何んだよっ」
にらみ合うジェダインとメイソン。
「「俺がジャンヌを幸せにするっ」」
二人の声がハモった。
けれど、
「こんな落ち着いた雰囲気の素敵な場所で、私を取り合わないでよっ」
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