第8話

「さぁ、着いたよ」

 王子が連れてきた場所は宝石店でした。


「これはどういう?」

「決まっているじゃないか。婚約指輪を買いに来たんだよ」

 そう言って、王子はお姫様抱っこを止めて、一度私を馬に乗せて、自分が降りて私を降ろしてくれた。店に入ると、私の好きな物をと言ってくださったけれど、突然のことで決められず、彼は私と一緒に指輪を見てくれて、私のリアクションや私に似合うかどうかを見てくれて、とてもいい指輪を選んでくれた。


「じゃあ、はめるね」

「はい」

 店を出ると、外は夕日になっていた。

 王子の細長い指が私の指に触れてドキッとしてしまったけれど、私は手を彼に預けた。私の左の手の薬指に彼の愛情の証がぴったりと収まった。

「よし、間に合った」

 王子が嬉しそうにそう言ったので、「何にですか」と尋ねると、

「誕生日おめでとう」

 と言ってくださった。


 そうだった。今日は、私の十六歳の誕生日だった。

「あっ、そうだ。キミの母上ほどではないと思うが、城にもいいケーキ職人がいて。家に帰りたいかもしれないが、これからどうかな?」

 私は間違っていなかった。

「やっぱり、帰りたいかい?」

 私が涙を流していると、王子が心配してくださるので、私は横に首を振る。

「嬉しくて・・・」

 王子が私を祝おうとしてくれていること。それも嬉しいけれど、私が馬車で話したことをちゃんと聞いてくださって、私の大切な思い出を私と共に大事にしてくれようとしてくれているのが嬉しかったのだ。私は王子のことをよく知らず、「王子はとても素敵な男性」という直観でプロポーズをすぐに受けたけれど、その直観は間違いなかったと確信した。こうして、私は最高の誕生日を最も愛すべき男性と過ごすことができた。


 その後、お城に着いたら、国王も王妃も大臣達も驚いていた。

 王子は才色兼備で人気が高く、今まで数多くの他国や自国の貴族の令嬢や姫との見合いの話があり、相手の家や女性からぜひ結婚してほしいと言われても結婚してこなかった男性だったらしい。一応貴族とは言え後ろ盾をしてくださる実の両親は亡くなっており、本来後ろ盾になるべきの養母が捕まったような私は歓迎されないかと思っていたけれど、王子のお父様、お母様で去る国王と王妃はそんな王子がようやく結婚すると言うことで大変喜んでくださった。


 そうして、私はティアラを授かりお姫様となりました。

 貴族たちの一部、特に王子に振られた令嬢たちから嫌がらせを受けることもありましたが、お義母様たちの嫌がらせに比べれば、全然気になりませんでした。そして、何よりお父様やお母様が残してくれた教育や経験のおかげで、私は良き妃として王子を支え、幸せな国、幸せな家庭を築いていくことができました。


 FIN

 

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義母が斡旋した相手と婚約破棄することになりまして。~申し訳ありませんが、私は王子と結婚します~ 西東友一 @sanadayoshitune

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