ウィン王子がダイヤのキングだとすれば、私は何のカードなんだろう。


「でも、手札を開ければ、手に入れられたんじゃないんですか……その……私を」


 自分で言うのも厚かましいと思いながらも、私はウィン王子に尋ねた。


「キミはお金で測れない。そうだろ? だから、キミが好きなんだ」


(……止めてよ)


 ウィン王子の瞳の奥が見えた気がした。

 寂しがりやのくせに、臆病で、言いたいことがなかなか言えない恥ずかしがり屋の少年。


「キミの見た目も好きだし、毎日キミの顔を見たら幸せなことだと思う。けど、この勝負で勝って手に入れたキミは心を預けてくれるだろうか。そんな形で手に入れたら、キミも僕も幸せになれない」


「じゃあ、なぜ? カイジンとポーカーを?」


「……」


「カイジン様が持ち掛けたのです」


 ウィン王子が黙っていると、再び執事のセバスが話す。ウィン王子がセバスを目で制するけれど、セバスは話を続ける。


「ウィン王子はあなたのために、あなたをこんな男から解放しようと」


「そうなんですか?」


 ウィン王子は困った顔をした。


「いいや、キミのためじゃない。これは僕のエゴだよ。もしかしたら、キミはこの男に振り回さえれながらも、苦楽を共に生きるのが幸せだったかもしれない」


 この人は誰だ?

 私が一国民として知っているウィン王子は、決断力があり勇猛果敢、誰もが憧れる存在なのに。

 それが、歯がゆかった。


「ひどい御方……」


「その言葉を甘んじて受けよう」


 私の言葉に寂しそうに笑うウィン王子。

 なぜ、男らしく私を強引に手に入れようとしようとされないのでしょうか。

 私の命すら賭けてしまうカイジンと暮らしていくのが幸せ?

 それならば、私を強引に奪って、強引に幸せにしてくださればいいのに。なぜ、王子にはその気概なないのです?

 ああっ!! ああっ!!

 男の方は自分勝手で、強引で、無責任でっ!!


「……決めました。ウィン王子は王子をお辞めくださいませ。そして、私を女王にしてくださいませ」


 部屋の空気が変わる。

 セバスやディーラーを先ほど務めた人はピリつき、カイジンは呆れながらも驚き、ウィン王子も目を丸くして驚いた。でも、ウィン王子の目だけは、私の言葉に唯一肯定的で、ワクワクしてキラキラ光っていた。


「キミが望むなら……そうしよう」


「王子っ!?」


 セバスが必死な顔でウィン王子を止めようとするが、ウィン王子はセバスを無視した。

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