第15話 素直になった詩織と理沙のお着替えと支度
「ばかぁ、今は大好きに決まってるじゃん」
本当は理沙からのお泊りを受けいれた新上を見た時、生まれて初めて強い嫉妬を経験した。その時に気付いてしまった。
――いやだよ?
私から離れないでよ。
私の傍にいるんじゃなかったの?
あー、これが恋なのかもしれない。
うぅ――理沙とちゅうしている姿想像しちゃったじゃん。
可能性がある理沙が羨ましいよ……。
あー、間違いない、気付いてなかっただけで新上のこと多分……昔から大好きだったのかもしれない。
恋はタイミングって言うけど……。
苦しい思いさせた私が今さら好きって最低だよ。
あー、死にたい。
でも死んだら新上にもう会えないのは嫌だな~。
今考えてみれば私が新上を好きな理由に心当たりがある。
そして理沙が新上を好きな理由にも――。
親友同士でお互いのことを知っているからこそわかる。
恋する理由もたぶん同じってことが。
私が新上に惚れたタイミングはあの瞬間だったと思う。
そして理沙が惚れたタイミングはあの瞬間だった。
ってことはその時から理沙は気付いていたのか。
私ですらわからないこの感情の正体に。
今まで幼馴染の関係が作る感情だと思っていた物がまさか恋の感情だったってことに。
ため息しかでない。
あの日に戻れるなら「お願いします! 彼女にしてください!」と素直に気持ちをぶつけたい。
でも今は――新上には理沙という彼女がいる。
流石に今からでは失礼極まりないと思うし、嫌われたくないのでとてもじゃないが素直に自分の気持ちを打ち解けれない。
よく聞く話しの一つに。
失ってから大切な存在に気付くというが、それは本当らしい。
ただ詩織の場合は失いかけて気付いたのでまだ可能性が極めて低いかもしれないがあるということ。
「はぁ~、死ぬほど恥ずかしいけど今から頑張るしか……ないよね私」
黒のレースが入った派手な下着を身に付けながら詩織は考え事をしていた。
お気に入りの下着を履いて、膝元までしかないスカートを選んだ。
これでは誘惑しているのがバレバレである。
「積極的な女の子に弱い……って私に積極的になれってこと? ……あ、ーもぉ! いいわよ! やってあげるわよ! 大好きってアピールしてあげるわよ!」
理沙の行動から新上が見せた反応を分析した。
そして自分がやろうとしていることを脳内で想像してみた。
顔が真っ赤になった。
身体も火照ってしまった。
あぁー、幸せ。
したいけど、恥ずかしい。
などと思ってしまうのはそれだけ気持ちがあるってこと。
生まれて初めての挑戦になる。
失敗したらどうしよう、最初の一手を間違えて大きく出遅れた、そんな不安と向き合いながらも理沙に負けないと心の中で誓う。
タンスに手を伸ばしてどれを身に着けていくかを選ぶ。
もう一度こちらを振り向いて欲しいな、という感情が無意識に下着と服を選んでいく。普段男の人と関わるときは絶対にしない格好。かつデニールが薄い黒のストッキングを履いてとただお泊りにいくだけなのに気合いが入ってしまう。上は下着のラインが薄っすらとわかる生地が薄い物とカーディガンでお洒落をしてみる。ただ寝る時に寒かったら困るのでちゃんと寝間着も持っていく。
「優斗ってこうゆうの好きかな……。お世辞でもいいから可愛いって言ってくれたら嬉しいなぁ~なんてね///」
詩織にとっての
「あぁ~もお、ばかぁ、ばかぁ、ばかぁ! 優斗って名前で呼んだら男子のこと名字でしか呼ばない私が新上を特別扱いしてますって認めてるようなもんじゃない! むぅ~やっぱり恥ずかしいから新上は新上!」
鏡の中にいる赤面した自分に向かって文句を言った詩織。
頬っぺたが膨らみ、唇を尖らせて、鏡の中の自分と見つめ合う。
「私のばかぁ……」
詩織は大きめのバックを手に持って、部屋を出た。
■■■
詩織がお泊りの準備をしている頃。
「ふ~ん、ふ~ん、ふ~ん、お泊りお泊り楽しみだな~」
約三年の月日、ずっと待っていた瞬間。
自然と胸が弾んでしまう。
「えへへ~、たまには素直に甘えるのもありだよね~」
今までは親友の詩織に正直遠慮していた部分がある。
正確には詩織が自分の想いにいつ気付いてしまうのかと内心ずっとドキドキしていた。
初恋をした日からできるだけ表面に出さないようにして、新上が自分を見てくれる瞬間をずっと待っていた。
その努力がようやく実ったと言える。
「にしても放課後の新上照れて可愛いかったな~。もうそろそろ優斗って呼びたいけどまだ恥ずかしいからそれはもう少ししてからかな~」
生まれて初めての異性とのお泊り。
自然体を意識しても身体の何処かに力が入って緊張してしまう。
ましてや人生初の彼氏となると、その頬のニヤニヤが止まらなくなってしまう。
家に帰るなり「アンタ高校生になって顔に出るようになったわね。お母さん別になにも言わないけど暴走だけはしないでね」などと早速釘を打たれた。
そう言った意味では、ちょっとズルいかもしれないが詩織を呼んだことは正解だと思う。
「やっぱり詩織は自分の想いに気付いちゃったか。「たぶん」とか言ってたけど、本当は後悔してて色々と認めたくないから我慢して自分に言い聞かせてる気がするんだよね、私の勘では」
ちょっと肌が見え胸元が緩い服に着替えながらポツリと呟く。
あえて大人っぽさと色気を演出するために赤の派手なひらひらが付いたブラジャーを選択した理沙はチラッと見えるか見えないかぐらいがいいかなー、などと新上から見た自分を大きな鏡の前で意識して服装を整えていく。寝間着は別に持っていくが、やっぱり好きな人には少しでも可愛い姿を見せたいのが女心である。
「よし! なら行くか!」
理沙は軽い足取りで部屋を出た。
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